2011 Fiscal Year Research-status Report
経口挿管患者における保湿ジェルを用いた口腔ケアのVAP予防効果と看護ケアへの影響
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23792594
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田戸 朝美 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30452642)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 口腔ケア / 集中ケア |
Research Abstract |
本研究は、人工呼吸器装着患者におけるVAP(Ventilator Associated Pneumonia:人工呼吸器関連肺炎)の予防に有効とされる口腔ケアにおいて、挿管チューブを介した流れ込みによる不顕性誤嚥(Silent Aspiration)を最小にしながら、口腔内環境を良好に保つ保湿ジェルを用いたケアの効果と看護師の口腔ケア行動に与える影響を検証するものである。今年度は、まず、本研究で採用する保湿ジェルを用いた口腔ケアの手法を学ぶため、実績のある施設へ行き、知識・技術を深めた。具体的には、本研究で採用する新しい口腔ケア技術を習得し、アウトカムとなる挿管チューブの汚染の程度を評価する技術法を習得した。また、本研究遂行をより促進させるものとして、呼吸療法認定士の資格習得を行った。このことにより、研究者が呼吸療法の実際により精通した医療要員であることを示すことができ、また本研究遂行時の患者への安全な技術提供、異常の早期発見対処が可能となった。 本研究は、研究者が所属する大学の附属病院に併設された倫理審査委員会へ研究内容の申請を行い、承認を得た。研究開始の具体的準備とともに、新しい口腔ケア手法の導入前に現在の口腔ケアに要する仕事量と主観的感情(気を遣う点や負担感など)を評価するための質問用紙を作成し、調査を行った。この結果、挿管チューブを使用している患者への口腔ケア技術は、慣習的に教えられているものの、多くの看護師が困難感を感じており、また個人による差異が多く存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、実験準備と予備実験期間としていた。実験準備では、採用した口腔ケア方法を行っている施設と調整を図ることができ、具体的な口腔ケア方法とアウトカムとなる挿管チューブの汚染の程度を評価する技術方法について十分な知識・技術を得ることができた。口腔ケア方法に関しては、調査対象となる研究者の所属する大学の附属病院救命救急センターにて、嚥下困難で誤嚥の高い患者へ類似した口腔ケアが行われており、本研究へ同意を得ることができた。救命救急センター所属看護師の挿管チューブ挿入中の患者への保湿ジェルを用いた口腔ケア技術の普及もスムースであった。また、アウトカムとなる挿管チューブの汚染の程度を評価する方法の試行を行い、画像の取得方法などの微調整を行った。本研究は、研究者が所属する大学の附属病院に併設された倫理審査委員会へ研究内容の申請を行い、承認を得ているが、予備実験のデータ収集は本年度内に遂行できなかった。よって、研究の達成度としては、やや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、アンケート調査と対象施設における介入研究を行う。アンケート調査は、全国調査として厚生労働省に登録されている第三次救急医療機関201病院を対象に救命センター及び集中治療室の看護師長宛に挿管患者に対する口腔ケアに要する看護師の労力に関するアンケート調査を実施する。介入研究では、対象者は対象施設の救命センターに入室し、気管挿管された患者50名とする。口腔ケア時に流水で洗い流す方法と保湿ジェルによる拭き取り方法に分け介入後、両群の比較検討を行う。その後、対象施設の集中治療室へ対象場所を変更し患者50名を対象に、介入を開始する。平成25年度は、前年度からの研究を継続し、データ収集を引き続き収集する。目標症例数に達した後、研究のまとめ、分析を行う。その後成果発表として、日本集中治療医学会への発表準備を進める。 前年度に実施したアンケート調査についても、データの整理、まとめ、分析を行う。その後成果発表として、日本集中治療医学会への発表準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度内に、予備実験のデータ解析を実施できなかった。よって、評価として計上していた画像処理ソフトに必要な費用138,206円が繰り越しとなった。この分は、今年度の研究費の使用計画として、アウトカムとなる挿管チューブの汚染の程度を評価するために必要な専用のノートパソコンと画像処理ソフトとして計上している。また、実際に口腔ケアを試行する看護師がその技術を確認しながら技術提供できるよう、ベッドサイドですぐに技術方法を動画で確認できるようにタブレットを計上している。申請時には本研究のデザインは前後比較研究としており、平成24年度は本実験の介入前のデータを収集する期間であった。よって、介入に必要な口腔ケア用品は準備する必要がなく、評価に必要な予算を計上していた。研究を準備するにあたって、より介入の影響をみるためには同時期の患者に行い、PROBE法を採用し、アウトカムを盲目化することが望ましいと考え、前後比較研究を準ランダム化研究へ計画を変更した。よって、同時期に介入を行う群と介入をしない群が生じることとなったため、介入時に必要な口腔ケア物品の予算を計上している。また当初は研究口腔ケアに関するアンケート調査を、調査施設のみでの実施としていた。しかし、個人差や地域性が大きいことから、計画を全国規模の調査に変更した。よって、全国調査に必要な紙代、郵送代などを計上している。
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