2012 Fiscal Year Research-status Report
経口挿管患者における保湿ジェルを用いた口腔ケアのVAP予防効果と看護ケアへの影響
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23792594
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田戸 朝美 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30452642)
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Keywords | 口腔ケア / 集中ケア |
Research Abstract |
本研究は、人工呼吸器装着患者におけるVAP(Ventilator Associated Pneumonia)の予防に有効とされる口腔ケアにおいて、挿管チューブを介した流れ込みによる不顕性誤嚥(Silent Aspiration)を最小にしながら、口腔内環境を良好に保つ保湿ジェルを用いたケアの効果と看護師の口腔ケア行動に与える影響を検証するものである。 本年度、救命救急センターに入室し気管挿管された患者14名に対し、通常の口腔ケアを行う群と保湿ジェルによる口腔ケアを行う群とで準ランダム化比較試験を実施した。 評価項目として、口腔内評価(改訂版ROAG)、気管内喀痰・咽頭粘液の培養結果、カフの汚染面積(抜管後の気管チューブのカフを歯垢染色液で染色)とした。分析方法は両群の平均の差についてt検定もしくはMann-Whitney検定を行った。起炎菌の発生率については、Fisherの直接法を用いた。カフの汚染面積を従属変数とした重回帰分析を行った。p<0.05以下を有意差有りとした。 この比較試験で、VAP起炎菌の発生率、ROAG、カフの汚染面積で両群に有意差は認められず、口腔ケア方法による差異はないと考えられた。カフの汚染面積については、重症度とROAGが関与していることが分かった。 この結果より唾液が咽頭・気管に流れ込み、カフの汚染を起こす要因となったと考えた。また挿管時に粘液と喀痰の細菌が高確率で一致していることからも、口腔内の菌が流れ込み肺へ影響を与えることが明らかとなった。つまり口腔内環境を良好に保ちながらかつ、体位の調整や適切な口腔内吸引、カフ上吸引による流れ込みを防ぐケアに重点を置かねばならないと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、全国調査と対象施設における介入研究を計画していた。 全国調査として計画通り厚生労働省に登録されている第三次救急医療機関201病院を対象に救命センター及び集中治療室の看護師長宛に挿管患者に対する口腔ケアに要する看護師の労力に関するアンケート調査を実施した。 介入研究では、対象施設の救命救急センターに入室し、気管挿管された患者50名を対象としていた。選択条件として気管挿管チューブの統一などを限定したため、対象者数が伸びなかったが、比較検討することができた。 以上のことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、保湿ジェルを使用したブラッシングの効果の検証と研究のまとめを行う。 保湿ジェルを使用したブラッシングの効果の検証では、ブラッシングでなければプラークが除去できないことが知られており実践されているが、破壊されたプラークが口腔内に飛散し洗浄されることによって、流れ込むことが考えられるため、保湿ジェルを用いて飛散を保護した上でのブラッシング方法を検証する。 また研究のまとめとして昨年度実施した全国調査の内容をまとめ報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に対象施設を変更して介入研究を予定していたが、実施に至らなかった。救命救急センターで得られたデータをもとに、研究計画を修正し今年度実施する予定である。 保湿ジェルを使用したブラッシングの効果の検証では、口腔内菌数を確認するための細菌チェッカーの費用を計上している。また細菌チェッカーは口腔内の湿潤度によって影響されるため口腔内水分計を計上する。 全国調査をまとめる際に、自由記述で得た質的データを整理するため、Text Analytics for surveys4を予算計上する。
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