2011 Fiscal Year Research-status Report
NICU(新生児集中治療室)入院児の母親の応答性の発達に関する研究
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23792634
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
宇野 日菜子 山形大学, 医学部, 助教 (60582567)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 看護学 / NICU / 応答性 |
Research Abstract |
本研究は,NICU(新生児集中治療室)入院児の母親の「応答性の発達」の特徴を明らかにすることを目的としている。平成23年度前期は参加観察法の質を高めることを目的に信頼性が確保されている母子相互作用の評価尺度(NCAFS日本語修正版:Nursing Child Assessment Feeding Scale)の研修会に参加し研究者レベルの評価技術を習得した。また,授乳場面の観察を応答性の評価尺度(AMIS修正版:Assessment Mother-Infant Scale)の作成者と一致度を確認し精度を高めた。 平成23年度後期は,退院直前のNICU入院児とその母親の応答性の特徴を明らかにすることを目的に,NICU入院群14組(NICUの母子)と非入院群43組(健常な母子)の調査結果を分析した。調査方法は,診療録による情報収集,質問紙調査及び授乳場面の観察である。調査項目は,基本的属性,EPDS(エジンバラ産後うつ病自己調査票日本語版)である。授乳場面の観察は,AMIS修正版を用いて応答性の行動評価を行った。結果,NICU入院群の母親はEPDS9点以上の割合が35.7%,非入院群の母親は7.0%であり,NICU入院群の母親の抑うつの割合が有意に高かった。また,NICU入院群の応答性は,非入院群と比べて,母親は児の「苦痛(泣き)に対する調整」が遅れており,児は「苦痛(泣き)」や「発声」を多く表出し,「授乳の調整(開始)」は自ら母親の乳首を探索しタイミングを見計らって授乳を始めていたことが明らかになった。以上のことからNICU入院群の応答性は,母親が児の苦痛への調整が遅れるため,児の苦痛が高まることが示唆された。また,NICU入院群の母親には抑うつの状態を把握したうえで,精神面に配慮した関わりが必要であり,児の苦痛に対する調整が適切に行えるような支援が必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度前期の目的は,授乳場面における参加観察法の質を高めることであった。母子相互作用の評価尺度(NCAFS日本語修正版: Nursing Child Assessment Feeding Scale)の研修会に参加・受験し,研究者レベルの評価技術を習得した。また,応答性の評価尺度(AMIS修正版:Assessment Mother-Infant Scale)作成者と得られたデータの一致度を確認し精度を高めた。 平成23年度後期の目的は,NICU入院群と非入院群の授乳場面の3時点(授乳開始時,退院前日,初回検(健)診時)における縦断的行動観察の調査開始であった。平成23年度後期は,退院直前の1時点における調査の分析を行い,NICU入院群(NICUの母子)の特徴を明らかにした。これによって,平成24年度の縦断的研究の基礎データを得ることができた。具体的に調査において工夫した点は2点あり,1点目はNICUに入院する対象者が少ないため,より多くの同意を得るために対象者およびスタッフとの信頼関係の形成に努めた点である。母親の面会時間に合わせてNICUへ行き,授乳場面の観察やコミュニケーションを図った。2点目は,個々の希望に合わせて授乳場面の撮影を行った点である。ビデオ撮影を拒否された場合はフィールドノートに記録したが,撮影に同意された方に対しては,撮影方法を選択していただいた。例えば,母親の顔は写さず首から下を撮影する形で母親自身の負担を軽減するような配慮を行った。これら2点の工夫を行った結果,NICU入院群は83.3%の同意を得ることができた。よって,平成24年度の縦断的調査に向けた対象者の確保の見通しを立てることができた。またNICUを有する調査施設は確保されている。以上のことから,平成23年度の目的はおおむね達成しており,順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,NICU入院群(NICUの母子)と非入院群(健常な母子)の3時点(授乳開始時,退院前日,初回検(健)診時)における授乳場面の参加観察法の調査を行う。方法は,妊婦健診時もしくは,入院中に母親へ文書を用いて口頭で依頼し,同意が得られた母子の授乳場面をビデオもしくはフィールドノートを用いて,参加観察を行う。授乳場面の評価にあたっては,平成23年度の調査結果で明らかとなったNICU入院群の母親の「苦痛(泣き)に対する調整」が遅れるといった特徴に焦点を当てた具体的な評価が必要である。そのため,児の「苦痛(泣き)に対する調整」をより詳細に評価できるNCAFS日本語修正版(Nursing Child Assessment Feeding Scale)を用いて応答性の評価を行う。データの精度を高めるために,NCAFS日本語修正版の研究者レベルの評価技術をもつ研究者と一致度をはかる。また診療録より基本的属性の情報収集を行い,質問紙調査では子ども総研式育児支援質問紙0~11か月児用を用いて,育児困難感,不安・抑うつ,家族機能を調査する。 研究を進めるにあたり工夫する点として,調査依頼を妊婦健診時から行い,より多くの対象者を確保する体制を整えることである。またNICUにおいては,母親の面会時間に合わせて授乳場面の観察を行い,コミュニケーションを図ることで対象者及びスタッフとの信頼関係の構築に努める。さらに,授乳場面における参加観察において研究者レベルの評価技術を保つために,NCAFS日本語修正版の講習会に参加し受験する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費として,授乳場面の観察を撮影したデータを客観的評価において得点化した際に,パーソナルコンピュータに得点化した点数を入力する必要がある。また,分析の際にパーソナルコンピュータを用いるため計上した。さらに,調査依頼の文書や進捗状況における報告のために印刷機が必要であるため,印刷機を計上した。消耗品費として,授乳場面の観察を撮影したデータの記録媒体のDVD-RAMが必要なため,DVD-RAMを計上した。また,分析に必要な統計処理ソフトウェア(SPSS)を計上した。国内旅費としては,研究者レベルの評価技術を保つために,NCAFS日本語修正版の講習会参加及び受験が必要であり,開催地である東京医科歯科大学への交通費,講習会参加費,受験費,宿泊費が必要である。謝金等として,研究協力者,調査協力者への謝金を計上した。
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Research Products
(1 results)