2011 Fiscal Year Research-status Report
人工妊娠中絶術を受ける女性と看護者のやりとりの場面に焦点を当てた看護に関する研究
Project/Area Number |
23792657
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
勝又 里織 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (00514845)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人工妊娠中絶術 / 看護者 / 看護ケア / フィールドワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、人工妊娠中絶術(以下、「中絶」とする)を受ける女性と看護者の中絶場面におけるやりとりの中で、互いにどのようなことを思って対応・反応しているのかを明らかにすることである。研究方法としては、フィールドワークと半構成的面接を行う予定である。 研究初年の今年度は、フィールドワークを行うにあたり、どのように中絶の場面に関わるのか(参与観察・非参与観察)、どのタイミングからフィールドワークを行うか(中絶を希望して来院した初診時もしくは中絶手術当日の朝から)など、具体的な方法についての検討と面接における質問項目の確認を行った。また、フィールドワークにおいて、対象者から情報を引き出すためには、その対象者との関係が重要である。そのため、研究実施予定施設に研修の希望を出し、数回、中絶を担当する看護者と直接話しをする機会を設けるとともに、実際の中絶場面に立ち会い、看護者と中絶を受ける女性のやりとりの観察をした。 その結果、分娩機能を伴う診療所においては、診療前や分娩・帝王切開などの処置の間に中絶が実施されていた。特に分娩は、その時間が予測しにくいこともあり、看護者同士で話し合い、中絶を受ける女性と分娩の時間が重ならないようにするなどの配慮がされていた。そして、中絶を担当する看護者は、診療録等の情報から女性が中絶をする状況について、手術を選択した経緯と女性がそれについてどのような想いを持っていそうか、ある程度の想像をしているが、内容によりそのすべてを確認することはせず、見守る姿が多く認められた。 一方、中絶を受ける女性は、今回が2回目の中絶という女性が痛みについて心配していたことを除き、自ら会話をすることはほとんどなかった。 以上より、中絶場面において、看護者と中絶を受ける女性は、少なからず思っていることがあるにも関わらず、それを出すことなく接していることが多いように思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、フィールドワークを行うに当たり重要と考えられる対象者との関係を構築することをメイン課題として、研究実施施設の院長および中絶を担当する看護者と研究に向けての話し合いを重ねた。その上に、研修を行ったことで、研究の方法についても、具体的なレベルで検討することができた。 ただし、研究者の異動に伴い、新たな職場において研究倫理審査を受けることが求められている。着任後、直近の審査に書類が提出できるように、早急に対応する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施予定施設における今年度の話し合いおよび研修において、研究方法に関する具体的検討を行うことはできた。結果の分析について、研究計画の段階では、エスノグラフィーによる分析を予定していた。しかし、看護者と中絶を受ける女性のやりとりの場面における対応と反応のプロセスを明らかにするためには、分析方法として、グラウンデッド・セオリー・アプローチの方が適切なのではないかとの見解もあった。今後、文献検討を重ね、有識者に助言を得て、再考する必要がある。 それと同時に、5月の倫理審査委員会に書類を提出し、最短で6月からデータ収集ができるように準備をする。そして、研究をさらに充実させる目的で、引き続き研修を続ける予定である。 また、適時、学会報告や情報収集を行う予定である。参加を予定している学会には、日本助産学会という女性を専門とした職能団体である助産師の学会がある。例年、この学会は3月に開催されていたが、今年度は北海道での開催ということもあり、気候を考慮して平成24年5月に行われることになった。そのため、今年度の研究費を参加費用に充てられるように次年度に持ち越すこととした。他にも、第38回日本看護研究学会での演題発表を予定している。 さらに、中絶や望まない妊娠に関する対応策やケアについては、教育学・社会学など、多数の分野がその見解を出している。主な研修会や講演会など(日本助産師会、日本家族計画協会、日本性教育協会等の主催のもの)には、積極的に参加し、最新の情報を集めたり助言を得たりして、研究をより充実したものにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究倫理審査委員会の承認が得られるまでは、今年度に引き続き、土曜日を中心に研究実施施設にて研修を行う予定である。それに対し、施設の利用料として、計\15,000円(\5,000円/月)を支払う。また、参加観察1回、その後1~2時間の面接に応じてくれたスタッフの方には、その情報提供料として、1人当たり\3,000円分の図書カードを謝礼(計\36,000円(\3,000円/人×2人/回))として渡す。倫理審査委員会承認後は、同じく研究実施施設に\45,000円(\5,000円/月×9カ月)と看護者に\75,000円(\3,000円×25人)、中絶を受けた女性に\75,000円(\3,000円×25人)渡すものとし、謝金として、約\250,000円の支払いを予定している。 また、学会への参加および研修会への参加費用として、\443,000円を計上する。参加学会は第26回日本助産学会学術集会(北海道)、第38回日本看護研究学会学術集会(沖縄)、第31回日本思春期学会総会・学術集会(軽井沢)、第41回日本女性心身医学会学術集会(東京)、第32回日本看護科学学会(東京)を予定している。研修会に関しては、日本助産師会主催の受胎調節実地指導員講習会3日間(東京)、日本家族計画協会主催のSRHセミナー(大阪)、ペリネイタル・ロス看護者研修会への出席(東京・小倉)を予定している。 そのほか、書籍購入や文献の取り寄せに対して\150,000円、文献やデータをまとめる際に必要な文具等の物品費として\150,000円を計上する。そして、論文の投稿に当たり、英訳の必要な場合が多く、それに対して\50,000円を計上する。
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