2012 Fiscal Year Research-status Report
人工妊娠中絶術を受ける女性と看護者のやりとりの場面に焦点を当てた看護に関する研究
Project/Area Number |
23792657
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
勝又 里織 杏林大学, 保健学部, 講師 (00514845)
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Keywords | 人工妊娠中絶術 / 看護者 / 看護ケア / フィールドワーク / エスノグラフィー |
Research Abstract |
本研究の目的は、人工妊娠中絶術(以下、「中絶」とする)を受ける女性と看護者の中絶の場面における看護について明らかにすることである。研究方法としては、フィールドワークと半構造化面接を行う予定である。 研究二年目の本年度は、研究倫理審査委員会への審査を依頼することから行った。委員会との数回のやり取りの後、平成24年9月27日付で承認が得られた。 また、前年度から対象となっていた施設が、今年7月にリニューアルされたこともあり、院内のシステムや役割分担等が、これまでと大幅に変更されたことが予測されたため、8月の夏季休暇期間を利用して、研修に入った。それにより、中絶を行う分娩室はこれまで1つであったが、2つに増えていること、中絶は火・水・金・土の9時から行われることが多く、1日1件の実施であることが分かった。そのため、原則、それらの曜日にフィールドワークを行うこととした。中絶に関わるスタッフは、昨年までの旧施設では病棟スタッフのみが関わっていたが、新施設に変わってからは、病棟スタッフ1名と外来スタッフ1名の計2名に変更されていることが確認できた。 そして、最初の半年は、スタッフが働く環境や1日の流れを知ること、およびスタッフとの関係づくりを目的としたフィールドワークを行った。1か月に数回ではあるが、フィールドに出向くことにより、施設内のスタッフとは確実に距離が縮まったことが実感できたため、平成25年1月下旬より、積極的に中絶の場面に実際に立ち合い、患者の来院から中絶手術、回復室での看護、帰宅までに至る一連の流れを観察することとした。対象の中には、来院時から涙を流すものもおり、その場合の対応についても観察することができた。その他にも、中絶は分娩室で行われることもあり、分娩進行者がいる場合は、どのタイミングで中絶を行うかについて、スタッフはかなり考慮していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年からフィールドワークは行っていたが、施設がリニューアルしたため、これまでとは変更されたこともあった。そのため、8月から研修に入り、9月の研究倫理審査委員会の承認後から、施設全体のフィールドワークを行った。その結果、フィールドワークで必要とされる研究者とスタッフとの関係性は、十分に築けたと考える。そして、平成25年1月から、中絶の場面に焦点を当てて参加観察を行うことにより、これまで見ることができなかった部分のスタッフの看護や考えなどを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、行ったフィールドワークを引き続き、頻度を増やして行う予定である。フィールドワークは、施設内全体の動きが観察できるように、「観察者としての参加者」となる場合と「完全な観察者」に徹する場合の2つのパターンで行うものとする。 今年度は、観察を行う中で、疑問に思ったことがあった場合に質問をしていたが、次年度は、1人40分から1時間程度の面接時間を設け、中絶の看護について看護者の考えを問う(半構造化面接)予定である。そして、これまで患者に質問をすることはなかったが、必要に応じて面接を依頼し、看護を受ける対象としての意見を聞く。また、場合によっては、看護者のみならず、施設内で中絶に関わる全てのスタッフ(医師、看護助手)にも、中絶の看護について面接を行う予定である。 適宜、学会報告や研修などを通し、情報収集をする。現時点で、参加することになっている学会には、日本助産学会という女性を専門とした職能団体である助産師の学術集会がある。通常、この学会は3月に開催されているが、開催地が金沢ということもあり、雪などの天候を考慮して、平成24年度分は平成25年5月に学会が行われ、平成25年度分の学会は、例年通り、平成26年3月に長崎で開催され、1年に2回行われることになっている。そのため、今年度の研究費を2回分の学会参加費に充てられるよう、次年度に持ち越すこととした。その他、研究とも関係の深い、第39回日本看護研究学会、第32回日本思春期学会、第33回日本看護科学学会にも参加し、情報収集を行う。 さらに、中絶や望まない妊娠に関する対応策やケアについては、教育学や社会学、心理学等、様々な分野においてその見解を出している。主な研修会や講演会(日本助産師会、日本家族計画協会、日本性教育協会等が主催するもの)には、積極的に参加し、最新の情報や助言を得ることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、火曜日・土曜日を中心に、「観察者としての参加者」を行う。その際、施設利用料(部屋の提供、ロッカーおよびピッチの貸与、対象者との連絡調整費)として、施設に対し、\120,000円(\10,000円/月×12か月)支払うものとする。そして、適宜、「完全な観察者」となる。その場合には、1回につき\6,000円(5時間以上の観察者1名につき\3,000円、1時間程度の観察者1名につき\1,000円×1~3名)のQUOカードを渡すこととし、およそ30回分(\180,000円分)を予定しており、謝金や謝礼として¥300,000円使用する。 また、学会参加費や研修費、データ収集に伴う交通費(1回往復¥600円程度)として、\461,020円を計上する。参加予定学会としては、第27回日本助産学会(金沢)、第28回日本助産学会(長崎)、第39回日本看護研究学会(秋田)、第32回日本思春期学会(和歌山)、第33回日本看護科学学会、第15回日本ヒューマンケア心理学会(東京)である。研修会は日本家族計画協会主催のSHRセミナー(札幌もしくは名古屋)、生きるための心の教育セミナー(岡山)、ペリネイタル・ロス看護者研修セミナー(小倉)を予定している。 そのほか、文献の取り寄せや書籍の購入に対して\200,000円、文献やデータをまとめる際に必要な文具等物品費として\100,000円を計上する。さらに、最終年の次年度は、論文投稿に当たり、英訳が必要となるため、それに対して\150,000円を計上する。
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Research Products
(1 results)