2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける子どもを喪失した夫婦の悲嘆過程とケアの検討
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23792665
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
吉田 静 福岡県立大学, 看護学部, 助教 (30453236)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国 / 韓国 / 死別ケア / 看護教育 / 宗教 / 文化 |
Research Abstract |
平成24年度に実施する面接調査に向けた基盤調査として、文献研究によって以下の2点を明らかにすることを目的として実施した。(1)中国人、韓国人の子どもを喪失した夫婦の死別ケア研究(2)中国、韓国の医療・死別ケアの状況、中国、韓国の看護・助産教育の内容と現状 対象文献は、1)医学中央雑誌WEB版(1989~2011)、2)PubMed(1989~2011)において「中国」「韓国」「死」「文化」「看護」「助産」「教育」のキーワードを掛け合わせ得られた文献のうち、中国、韓国の死生観や宗教観に関するもの、看護や助産教育の内容が記載されているものを選択した。 (1)では、高齢者を対象とした悲嘆研究報告が中国で1件見られたが、両国共に子どもを喪失した夫婦の死別ケア研究論文は見当たらなかった。その理由として、中国では家族との死別悲嘆は個人で処理すべきであり、公の場で他人と分かち合うことが奨励されていない文化があり、韓国では看護基礎教育の中でホスピスケアがほとんど行われていないことで一般に認知されていないことが考えられる。しかし死生観に関する研究は多く行われており、死と向き合った経験の有無や個人の宗教観が「死への恐怖」「来世への期待」などに大きく影響していることが明らかになっている。(2)は、両国共に教育科目の中に「臨終看護(中国)」「ホスピスケア(韓国)」が含まれているが看護教育者の数自体が少なく、学生に十分な教育を行うことができていない。しかし、日本同様に看護教育が専門学校から大学、大学院教育へと移行しつつあるため、今後充実した教育が行われることで社会全体に広く浸透すると考えられる。 以上より、中国、韓国ともにほとんど死別ケアが行われていない実態が明らかになった。この実態を踏まえた上で両国の子どもを喪失した夫婦にインタビューを行い、夫婦の求めるケアや支援、ニーズを明らかにすることを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度実施予定の面談に向けた基盤調査としての文献研究はほぼ実施することができ、目標達成することができた。文献研究を行う中で、国外の文化や医療、看護水準等を調査することに限界を感じた。そこで渡航し子どもを喪失した夫婦へ面談を行うにあたり、各国の病院や看護系大学など教育機関の視察も行うことで、不足している情報を補いたいと考えている。またグリーフケア先進国であるアメリカにてグリーフケアプログラム視察と実践者への聞き取り調査を実施したことで、改めて日本を含む東アジアの死別ケア研究とケアモデルの構築に取り組む。 しかし渡航に向けたコーディネーター、通訳者の探索が遅れており、中国、韓国へ渡航する予定が未定の状態となっているため、早急に計画を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は中国、韓国に渡航し、コーディネーター・通訳者を通して、子どもを喪失した夫婦に面談(聞き取り調査)を行うことを予定している。しかし、現地でのコーディネーター、通訳の探索が遅れていることで研究計画の実施が遅れる可能性があるため、早急に的確な人材を探した上で計画通りに実施できるよう努める必要がある。 また渡航した際に、子どもを喪失した夫婦へ面談を行うにあたり、各国の病院や看護系大学など教育機関の視察も行うことで、中国、韓国の社会文化的側面と医療・看護の実態も把握したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)中国、韓国に渡航し、子どもを喪失した夫婦への面談と病院・教育機関の視察が研究費使用の主となる(コーディネーター・通訳者との打ち合わせ、謝金等含む)。(2)インタビュー内容の逐語録作成に際して、中国語を日本語へ翻訳する必要があるため専門業者へ委託する委託料・作業費用が必要となる。(3)中国、韓国へ渡航するだけでなく、国内のグリーフケアに関する研修への参加や書籍・文献を読むための費用が必要である。
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Research Products
(1 results)