2012 Fiscal Year Annual Research Report
母体の化学物質曝露が妊娠・分娩および新生児に及ぼす影響
Project/Area Number |
23792670
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西岡 笑子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 助教 (70550797)
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Keywords | 妊娠 / 分娩 / 微量元素 / 新生児 |
Research Abstract |
【背景】近年、各種環境化学物質の低濃度曝露による人への健康障害、とりわけ生殖障害や胎児への急性・慢性毒性が懸念されている。特別な曝露がない人の生体中のごく僅かな変化が健康に影響を及ぼすことが示されている。特に、妊娠から出産におけるイベントにおいては、微量元素の影響は大きいと考えられ、妊娠、分娩および新生児の健康状態との関連が着目されている。しかし、本邦において微量元素の低濃度曝露が妊娠、分娩を含めた母体および新生児に及ぼす影響に関する報告はほとんどない。 【目的】妊娠36週の母体血中鉛濃度と妊娠高血圧症候群との関連を明らかにする。 【方法】本研究は病院倫理委員会の承認後に実施した。産科外来を受診した妊娠36週の妊婦に対し、調査概要を口頭および書面を用いて説明し書面による同意を得た。対象者には、基本属性および生活習慣に関する自記式質問紙調査を行うとともに、妊娠36週の母体血、分娩時の臍帯血、産後3日目の母体血の採取を行った。微量元素の測定は、酸分解ののち誘導結合プラズマ質量分析計により行った。 【結果】回収された質問紙は123部( 回収率 97.6 % )であった。対象者の平均年齢は32.9 ± 4.4歳、平均在胎週数は39.5 ± 2.9週、出生した児の平均出生体重は3035.8 ±356.8g、性別は男児58名、女児65名であった。妊娠高血圧症候群を発症した妊婦は4名( 3.3% )であった。妊娠36週の母体血中鉛濃度は、妊娠高血圧症候群の妊婦と正常妊婦の間に有意な差はみられなかった(Mann-Whitney U 検定, p =0.64)。 【考察】妊娠高血圧症候群と血中鉛濃度との関連はこれまでの研究と異なる結果であった。これには検出力不足が考えられる。今後更に対象者数を拡大し、基本属性、生活習慣、母体血中鉛濃度動態、臍帯血中濃度と分娩アウトカムとの関連を検討する必要がある。
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