Research Abstract |
本研究は,胃がん発症と関連が認められているHelicobacter pylori(以下Hp)感染と萎縮性胃炎(以下AG)に着眼し,一般住民における胃がん発症リスク(Hp感染とAG)と生活習慣との関連について明らかにすることを目的とした。 本調査は,岩木健康増進プロジェクト プロジェクト健診と連携し,健診初年度(H17)を受診した1,067名のうち,血清ペプシノゲンI,II値を多く追跡できたH19データと,H23~H25の生活習慣データを用い分析した。各年度の追跡データはH23 196名,H24 191名,H25 186名であり,Hp(+)・AG(-)群を多く追跡できたH24データ,H17にHp(+)・AG(-)群(N=41)で,H19でAG(-)群(N=35,以下維持群)とAG(+)群(N=6,以下進行群)を用いた。維持群,進行群ともにH25までに胃がん発症はなく,維持群では11名(31.4%)が除菌を実施し,うち9名が除菌に成功をしていた。進行群で除菌を行ったのは1名(16.7%)であり,その除菌が成功したかは不明であった。また,維持群,進行群ともに生活習慣(喫煙,飲酒,運動習慣,間食-朝食,肥満の有無,パックイヤー係数,睡眠時間,BMI)に有意差はなく,食事摂取量では,維持群では進行群よりも牛乳量が有意に多く,脂が少ない魚の摂取量が有意に少なかった。 以上より,維持群ではHp菌除菌者が多く,すでに除菌したことが,胃がん発症原因となる胃粘膜萎縮の進行を予防したと思われる。また,維持群と進行群の食事摂取量に相違が見られたが,今回は過去1か月の食事摂取量を確認しているため,その食品と胃粘膜萎縮との関係についてはさらに検討が必要である。今後も継続して調査を実施し,AGと食品接種品目と摂取量等の生活習慣との関係を検討し,胃がん発症に影響を与える生活習慣を明らかにしていく必要がある。
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