2011 Fiscal Year Research-status Report
創傷感染メカニズムの解明による新たな看護ケア方法の確立
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23792692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仲上 豪二朗 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70547827)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 感染看護 / クオラムセンシング / 緑膿菌 / 分子生物学 / 遺伝子発現 / MMP / AP-1 |
Research Abstract |
褥瘡細菌感染は重篤な合併症であるが、消毒や抗生剤など、細菌を死滅させる侵襲的な対応ではほとんど効果がない。「細菌の死滅に依らない感染制御」の確立を目的に、クオラムセンシングという細菌の遺伝子調節機構に着目して、研究を計画した。緑膿菌クオラムセンシングシグナルであるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)は哺乳細胞の遺伝子発現を変化させることが報告されており、それが創傷感染の一部を担っている可能性がある。ラット線維芽細胞株(Rat-1)に対して、緑膿菌AHL(3-oxo-C12)を作用させ、各種MMPの遺伝子発現をreal-time RT-PCRにて経時的に解析した。また、その作用メカニズムを検討するため、種々のシグナル伝達経路阻害剤で前処理した後、AHL処理を行い、遺伝子レベル、蛋白質レベルにて検討を行った。Mmp遺伝子発現の解析の結果、Mmp3、7、9、13において著明に発現が増加していた。また、それらの発現制御に共通に関わるシグナル伝達経路に着目し解析を行ったところ、AP-1サブユニットであるc-fosおよびc-junにおいて発現が上昇していた。また、c-Fosが活性化し、核内移行が生じていた。各種シグナル伝達経路を検討した結果、ERK、p38およびAP-1阻害により、Mmpの遺伝子発現およびc-Fosの核内移行が抑制された。さらにラットMmp9のプロモーター領域をクローニングし、プロモーター活性を検討したところ、Wild typeではAHL処理により活性が上昇したが、AP-1結合サイトを欠損させると活性上昇は抑制された。以上より、AHLはラット線維芽細胞において、AP-1/ERK/p38を介してMmpの遺伝子発現を上昇させていることが強く示唆され、AHLによる炎症誘導メカニズムの一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット線維芽細胞株を用いて、緑膿菌AHLによるMmp発現制御機構の一端を解明し得た事により、AHLが哺乳細胞へ直接的作用を及ぼしている証拠を改めて確認し、その制御機構を考察するための十分なデータを取得し得たため、概ね順調に経過していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果を基に、緑膿菌AHLによって引き起こされる過剰な炎症反応を抑制する手法を考案し、当研究室の保有しているラット創傷感染モデルを使用してその効果を検証する。また、直接的な抑制方策を追求するため、AHLによるMMP発現誘導機構のうち、より上位のメカニズムを解明するin vitro実験も合わせて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度においてシグナル伝達経路を検討するために利用した系では十分に明らかにすることが出来なかったより上位のメカニズムを検討するために、AHLの濃度条件を段階的に調整し、DNAマイクロアレイにて網羅的に遺伝子発現の挙動を比較することで、特定の濃度で上昇するMmpの遺伝子発現に特異的な調整システムを探索する。このための実験費用が必要となる。
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Research Products
(6 results)