2011 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患患者のパートナーシップ形成に基づく「リカバリー」モデルの構築
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23792708
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 亜紀 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (10413527)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 精神看護学 / 家族看護学 / パートナーシップ / リカバリー / ACT |
Research Abstract |
「リカバリー」とは、病気の回復だけではなく社会に生活し自分の人生を歩むことである。本研究の目的は、わが国の新しい取り組みである包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)において、精神疾患を有する人と援助者(家族や看護師など)のパートナーシップ形成と「リカバリー」の関係性を明らかにした上で、入院医療に適用されうる「リカバリー」モデルを構築することである。 平成23年度は、ACTを利用して地域で生活する精神疾患を有する本人の家族の思いや態度に関する質的記述的分析を基に、援助者である家族を対象とした支援の文献的考察を行なった。 質的記述的分析の結果、抽出されたカテゴリーは家族の「リカバリー」に関する内容であった。本分析結果により、抽出されたカテゴリーを説明変数とし、家族の「リカバリー」を基準変数とする家族の「リカバリー」モデルの概念想定が可能となった。疾患を有する本人の「リカバリー」の促進要因として、家族との「パートナーシップ」形成が重要と考えられる。また、先行研究を対象とした文献的考察の結果、わが国の代表的な家族支援は、家族のストレスマネジメントを目的とする集団心理教育が主であった。既存の家族支援の方法では、近年の地域精神保健医療体制の改革に適用させること、特に、地域で「リカバリー」を目指す精神疾患を有する人と家族のパートナーシップ形成への有用性は低いことが考えられる。 以上より、本研究成果の意義は、精神疾患を有する人と家族の関係性、すなわちパートナーシップ形成に基づく「リカバリー」モデルの構築と、家族支援の構造化の2点において有用性が高いことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)における精神疾患を有する人のパートナーシップ形成と「リカバリー」過程との因果関係を明らかにした上で、入院医療に適用されうる「リカバリー」モデルを構築することである。研究期間は4年である。平成23年度は、既存のACT実践を対象とした先行研究から、家族の「リカバリー」の概念構造を明らかにした。当初計画の患者本人の「リカバリー」と「リカバリー」に重要とされる「パートナーシップ」の概念の構造化には至らなかった。家族の「リカバリー」は、精神疾患を有する人の「リカバリー」過程の関連要因と考えられるため、平成24年度より、家族の「リカバリー」モデルの臨床研究を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
精神疾患を有する人と家族の関係性に焦点を当てた「リカバリー」モデルに基づく家族支援プログラムの構造化と評価を行う。具体的には以下の通りとする。1. ACTスタッフへのインタビュー調査による「リカバリー」と「パートナーシップ」の概念抽出と、ACT利用者の家族の思いと態度に関する質的記述的分析により抽出されたカテゴリーを基に、家族支援プログラムを構造化する。2.地域で生活する精神疾患のある人とその家族を対象として、1.で作成した家族支援プログラムの臨床研究を行う。プログラムの評価方法は検討中である。3.家族支援プログラムの有効性が確認されないことを想定した対応策として、(1)ACT利用者の家族の思いや態度に関するインタビュー調査を、理論的サンプリングによりデータ収集を再開し分析、(2)家族支援プログラム内容の見直しと修正、(3)臨床介入期間の延長、を行う。4.2.3.で明らかとなった結果を、入院医療におけるパートナーシップ形成と「リカバリー」過程の因果関係の解明に応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的は、包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)を利用する精神疾患を有する人と援助者(家族や看護師など)のパートナーシップ形成と、「リカバリー」の関係性を明らかにした上で、入院医療に適用されうる「リカバリー」モデルを構築することである。先行研究で明らかとなった家族の「リカバリー」は、精神疾患を有する人の「リカバリー」を促進する関連要因と考え、平成23年度は、家族の「リカバリー」概念の構造化を行なった。このため、患者本人の「リカバリー」概念の構造化と臨床研究を平成25年度以降に繰り下げた。平成24年度は家族との関係性に焦点を当てた「リカバリー」モデルに基づく家族支援の構造化および臨床研究を行うことに当該研究費を使用する。平成25年度以降に入院医療に適用可能な「リカバリー」モデルの構築に着手の予定である。
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