2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科病棟で患者から暴力を受けた看護師への支援に関する研究
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23792719
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
田辺 有理子 岩手県立大学, 看護学部, 助教 (20448616)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 看護学 / 暴力 |
Research Abstract |
医療現場において、看護師は患者へのケア提供時に、患者から思わぬ暴力を受けることがある。このような暴力の影響は深刻で、看護師の自尊心を低下させ、患者への看護ケアの提供を阻害することが明らかになっている。しかし、暴力発生後の上司や同僚の指導・助言が看護師をさらに追い込む危険性があることは、ほとんど認識されていない。そこで本研究では、特に暴力の発生が多いとされる精神科において、患者から暴力を受けた看護師への効果的な支援方法の構築を目的とする。 平成23年度は研究計画初年度として、先行研究として実施した医療現場で発生する暴力の認識と報告に関する看護師の現状調査を踏まえ、暴力を受けた看護師および暴力発生後の支援に携わる看護職へのインタビュー調査を実施した。 先行して実施したインタビューおよび質問紙調査の結果から、患者から暴力を受けた際の同僚や上司への相談・報告について検討した。身体的暴力・言葉の暴力・セクシャルハラスメントなど暴力の種類によって、また暴力発生の状況によって、暴力の捉え方が多様であり、報告するか否かの判断が看護師によって異なっていた。 その結果をもとに暴力を受けたあとの同僚や上司の言動を含む看護師の体験、またその現状を踏まえて求める支援などについて、体験した事例に沿って語れるようにインタビューガイドを作成し、6名のインタビュー調査を実施した。暴力後の体験として、外傷部位の写真撮影、暴力場面の検証による再体験やその際の上司や職員の対応、暴力発生直後だけでなく時間がたってから話題にあがることなどが語られた。看護師の対応が悪いと非難される、あきれられるなど、二次的被害となる体験があった一方で、暴力を受けた後に同僚が付き添ってくれたことなど助けられ、支えられたと感じる体験があり、同僚や部下が暴力を受けた際に自身の体験に基づいて支援し、暴力の再発への対策を講じていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究初年度となる今年度は、暴力を受けた看護師への支援を検討するため、暴力を受けた経験のある看護師および支援経験のある看護師へのインタビュー調査を計画した。先行研究から患者から暴力を受けた際の同僚や上司への相談・報告について検討し、インタビューガイドの素案を作成、インタビュー調査を始動する準備を行った。研究者所属大学がある岩手県は平成23年3月の東日本大震災により甚大な被害を受けたことから、医療現場の混乱の中における看護師への負担を考慮し、インタビュー調査は年度後半に計画した。その結果、今年度は6名の協力を得て実施することができた。したがって、初年度の計画はおおむね順調に遂行することができたといえる。 今後は、調査データの分析を進め、質問内容を検討、改定しながら事例を増やしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
暴力発生後の看護師の体験と、看護管理者が認識する支援を調査し、立場による認識の相違から問題点を明らかにし、効果的な支援方法を構築するとともに、暴力発生後の支援に関する現任教育での有用性を検証する。 当初、初年度に暴力を受けた看護師の体験を、2年目に支援する看護管理者の認識を調査する計画であったが、両者の調査を並行して進め双方の認識を照らし合わせながら事例を重ねていく方針に変更することとした。今後は、施設および対象者を増やしてインタビュー調査を進める予定である。 看護師の認識と、看護管理者の認識とを照らして、ニーズと支援の実際の共通点と相違点、それぞれの体験の相互作用を多角的に検証する。看護師、看護管理者へのインタビュー調査の結果を基に支援策を作成し、その妥当性について、精神科看護師への郵送による自己記入式質問紙調査を実施する。調査の結果を基に、暴力を受けた看護師への支援内容と、対象者の属性、職場環境などの要因について、項目間の偏りなどから看護師の特性に合わせた支援内容を検討し、支援策を改良して提案する。 得られた知見を積極的に看護学関連の学会に発表し、臨床の看護師および看護管理者のほか専門領域の研究者と広く意見交換し、支援案の有用性と活用の実現性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、精神科病棟の看護師および看護管理者へおインタビュー調査を実施するため、調査のための旅費、謝礼品およびインタビューデータの反訳料が必要となる。 本研究の背景となる精神科医療および看護に関する情報収集のため、書籍・資料等を購入する。 得られた知見を看護学関連の学会に発表し、臨床の看護師および看護管理者のほか専門領域の研究者と広く意見交換するため、学会参加費および旅費が必要となる。
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