2011 Fiscal Year Research-status Report
レビー小体型認知症のある高齢者の体験に基づいたケア方法の構築
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23792755
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
加藤 泰子 兵庫医療大学, 看護学部, 助手 (70510866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | レビー小体型認知症 / 看護学 / 認知症 / 医療・福祉 / 脳神経疾患 / 老化 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画である1)研究環境の準備とインタビューガイドの作成と倫理審査の承認2)研究対象者の選出3)データ収集(研究対象者へのインタビューの実施)を終了し,研究は当初の予定通り進行中である.本研究は,DLBの人にインタビューを行うため認知症の告知の倫理的配慮が必要であるが,レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Body以下DLBとする)の発見者でもある小阪憲司先生による専門家の診断と判断のもと研究対象者が紹介されデータ収集を進めることができ,DLBの人9名と家族11名にインタビューを行った.現在はまだ分析段階であるが,DLBによる変化や幻視に対してのDLBの人の思いやその過程が明らかになりつつある.具体的には,ある人は幻視をゴーストと呼ぶようになり「すべてがゴーストではないかと思います」と今見えている現実は真実か幻視なのか判断できず,「決めつけてくれたほうが楽です」と幻視であることを教えて欲しいと語った.つまり支援者は,DLBの人の幻視の自覚や心理面を理解するための積極的な介入が必要であることが示唆された.また精神科病棟に入院し,回復し現在自宅で生活をするDLBの人をを支えている家族からは,絶望的な状況から「症状がよくなる」ことを体験し,「DLBは治るんだ」と語った.このような家族の体験からは家族がDLBと向き合う心理的変化やその時の家族支援方法など明らかになりつつある.以上のように現在は,本研究の目的でもあるDLBとその家族の体験からDLBの人と家族の困難や思い,希望などが明らかにすると共に,DLBの高齢者とその家族に適切なケア方法の構築に向けて取り組んでいる状況である.そして平成24年度に分析した結果は,平成25年度の日本認知症ケア学会または日本老年看護学会で発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年は本研究の初年度であり,データ収集までを計画していた.当初の計画では,研究対象者(DLBの人10名,その家族10名)にインタビューを行う予定であったが,実際は,DLBの人9名,家族11名にインタビューを行いデータ収集することができた.DLBの人9名と予定より1名少ないが,研究者は,本研究の前段階としてDLBの人8名にインタビューをした実績があり,この先行研究の結果と比較しながら本研究のデータを分析することができるため問題はない.また,今はデータの分析段階であり,明らかなことは提示できないが,収集したデータの内容は,DLBの人の思いや困難な状況を語ってくれたものである.これらは本研究で必要としていたデータである.また本研究では,家族に初めてインタビューを行ったが,家族の視点からDLBの人と生活し支えることの困難の具体的な内容やその時の思いなどを聞き出すことができている.よって,現在は,計画通り研究が進んでいるとともに,本研究の目的に必要なデータが収集できいる状況と言える.特にDLBの特徴でもある幻視やパーキンソニズム,認知機能の変動に対しての体験や思いを聞くことができており,本研究で着目しているDLBの特徴に対してのケア方法を提案できる可能性が高い.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,1)データの分析(期間:4月~8月),2)研究結果の報告と確認(期間:9月~10月),3)DLBの高齢者への必要なケアの要素の検討(期間:8月から3月)の予定で進めていく計画である.研究の分析は,認知症の専門家でもある石川県立看護大学看護学部高山成子教授,兵庫県看護協会認知症認定看護師教育課程久米真代主任教員,兵庫県立大学看護学部高見美保准教授のスーパーバイズを受けながら進めていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)データ分析において,まずはインタビューした音声データを文字に変換する作業が必要となる.これは非調査者が行うことが望ましく業者に委託する.そのため作業費(テープ起こし代)が必要となる.一般的に1分200円程度である.インタビューは,1人30~60分の予定で1-2回実施しているため作業費として25万程度必要となる.次にこれらのデータを分析する際には,専門家による会議を行いながら進める.そのために会議費,謝金,交通費,海外文献の翻訳などの費用が必要となる.2)研究結果の報告と確認では,分析の結果得られた内容を研究対象者に報告し意見を頂く.この過程を踏むことにより,研究結果の確実性を確保する.この際に交通費や宿泊費,研究対象者への協力に対しての謝金・手土産等が必要になる.3)DLBの高齢者への必要なケアの要素の検討においては,専門家による会議,謝金,交通費が必要となる.4)以上のような研究過程を踏むにあたって,書類等の印刷費,保管整理用のファイルや分析段階に必要な文具類,郵送費等の消耗品の費用が必要となる.以上が次年度の研究費の使用計画である.
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