2012 Fiscal Year Research-status Report
未就学児を育児中の労働者のワーク・ライフ・バランスに関する研究
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23792761
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
久保 陽子(安井陽子) 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (90412668)
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Keywords | 未就学児 / ワーク・ライフ・バランス / 仕事 / 家庭 / 精神的健康 / 首尾一貫感覚(SOC) / ソーシャル・キャピタル |
Research Abstract |
乳幼児を育児中の世帯のワーク・ライフ・バランスを職場と家庭だけでなく、地域全体の問題として捉え、より良好な精神的健康を目指して多角的な視点から取り組むことを目的とし、平成24年度は主に以下の研究を実施した。 1.質問紙調査:未就学児を育児中の労働者のワーク・ライフ・バランスの実態を把握することを目的とし、北九州市内認可保育園4か所(対象:398世帯796名)で、夫婦それぞれに質問紙調査を実施した。 (1)結果:生活上で最も困難なことは男女ともに、「子供が病気になったとき」であった。仕事‐家庭関係のネガティブな影響(NS)は男性の方が女性より高かった。反対にポジティブな影響(PS)は女性の方が高く、仕事と生活のバランスがとれているという感覚も女性の方が高かった。精神的健康度(K6)と仕事‐家庭関係では、男女ともにNSが高いほどK6が高い結果を認めたが、PSとK6との関連は男性にのみ認めた。首尾一貫感覚(SOC)では、男女ともに仕事‐家庭関係のNSと負の相関、PSと正の相関を認め、SOCとK6には強い相関関係を認めたため、SOCを従属変数とした重回帰分析を行った結果、男女ともに充実度(生活満足度、仕事満足度、主観的健康度、仕事と生活のバランス、仕事のやりがい)が主要な因子であった。また、男性では人間関係を含めた職場環境もSOCを高める要因として認めた。女性では基本的信頼感や近所の人の信頼感などを含めた信頼度が要因として認められ、男性は職域、女性は地域からのアプローチの重要性が示唆された。 (2)問題意識の共有:本調査結果をまとめたものを北九州市子ども家庭局および、北九州市市議会議員、地域の子育て支援団体へ公表し、市民の実態と問題の共有を行った。また、調査協力依頼した全世帯および、市民を対象に、働きながら育児をしている人の精神的健康を良好に保つための方策として、調査結果の公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
育児休暇により研究実施が遅れていた分、計画を変更しながら本調査の実施および結果の還元まで実施できた。しかし論文報告までは至らなかったため、今後は論文作成をしながら調査を進めたい。 質問紙調査により、未就学児を育児しながら働く人の実態が明らかになり、課題・問題といったネガティブな面だけでなく、精神面にも良い影響を与えるようなポジティブな面も明らかになった。これらの結果を保育園に通う子を持つ親や行政、地域の子育て支援団体等へ公表することにより、問題意識の共有と、仕事と育児を行うことによるポジティブな面を活用した支援策の構築にもつながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に実施した質問紙調査の解釈をより深めるために、今年度は専業主婦を含めた未就学児を育児中の親に調査を実施する予定である。未就学児を育児する就労者の精神的健康に対するポジティブな影響とともに、専業主婦との相違を明らかにする。 1.質問紙調査:未就学児を育児中の親のワーク・ライフ・バランスの実態調査を行うことで、専業主婦と就労主婦およびその配偶者について、それぞれの課題と利点を明らかにし、未就学児を育児中の親の精神的健康を良好に保つための支援策を構築することを目的とする。専業主婦も含めた調査を行うことにより、対象に応じたより具体的な支援策の構築につながることが期待される。 2.結果の還元:前年度同様に、未就学児を育児中の親、行政および地域の子育て支援団体に行い、問題を共有しながら支援策の構築につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多変量解析ソフトの購入、質問紙調査回収用の郵送費(1000部)、印刷費、研究協力依頼や打ち合わせ、結果の公表等に係る旅費を主な使用計画としている。
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Research Products
(4 results)