2011 Fiscal Year Annual Research Report
逆問題アプローチに基づく集光模様の生成に関する研究
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23800011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楽 詠コウ 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (30612923)
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Keywords | 集光模様 / 透明屈折物体 / 逆問題 / ファセット / ピクセルアート / グラフ理論 / 混合性整数計画問題 / NC機械 |
Research Abstract |
本研究は、CG分野の研究であり、研究目的は、ユーザの指定した所望の集光模様に応じて、その集光模様を生成する透明屈折物体の形状を自動的に設計する方法の開発である。従来は、透明屈折物体が与えられたとき、その集光模様を計算するという順問題の解法の研究が主であったが、本研究はその逆問題である点に特色がある。表面形状の計算方法として、平成23年度は主にファセットの集合に基づくアプローチを開発した。コンピュータによるシミュレーションだけでなく、NC機械を用いて実際に実物を製作した。 平成23年度中に開発した方法は二つあり、以下具体的に述べる。まず、二つの手法に共通する点として、光源は平行光源(太陽光や離れた点光源など)を想定し、透明屈折物体の材質は、加工しやすく屈折率の高いアクリル樹脂とした。一つ目の手法では、透明屈折物体は単一の物体である。光源からの光は、物体の一つの平面(入射面)に入射して物体を透過し、反対の面(射出面)から物体の外にぬける。射出面は、巨視的に見ると入射面に平行であるが、異なる法線ベクトルをもつ小さなファセットの集合から構成されており、光はファセットの法線方向に応じて異なる方向へ屈折し、スクリーンに到達して集光模様を形成する。提案法では、入射面から入射した光とスクリーン上に到達する光との間の対応関係を、グラフ理論を応用して求め、ファセットの法線を計算して物体形状を求めた。二つ目の手法では、この考え方を拡張して、透明屈折物体を並べ替え可能なアクリルの棒から構成した。各々の棒は特定の方向に光を屈折でき、棒の配置を変えることでさまざまな集光模様を表現可能である。提案法では、棒の配置を求める問題を混合整数計画問題に基づく最適化問題として定式化した。提案法は、棒をグリッド状に配置しており、新しいピクセルアートの表現法ともいえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
透明屈折物体を並べ替え可能な棒で構成する手法の開発は,当初平成24年度に行うことを想定していたが,予定よりも早く着手し,完成させることができた.その反面,ファセットの集合に基づくアプローチで,得られる透明屈折物体の形状は不連続な面となるので,実際に物体を製作する際に製作精度の限界を受け,予想よりも得られる集光模様の品質が低い.この問題の解決が今後の新たな課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは,ファセットの集合に基づくアプローチで,透明屈折物体の形状設計を行う方法を開発したが,得られる透明屈折物体の形状は不連続な面となる.このため,実際に物体を製作する際に製作精度の限界を受け,予想よりも得られる集光模様の品質が低い.この問題を解決し,高品質な集光模様を生成できる透明屈折物体を得るため,今後は射出面が連続(曲)面となるような,形状設計法を主に研究していきたい.そのためには,入射面から入射した光とスクリーン上に到達する光との間の対応関係が,下記二点の性質を満たす写像である必要がある.一点目は,写像が連続的であることであり,二点目は,写像が光のエネルギーを保存することである.これら二点を満たす写像を求める方法を開発していきたい.
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