2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸がミトコンドリア増殖のシグナルとなる可能性の検討
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23800021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 太佑 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (70612117)
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Keywords | 乳酸 / ミトコンドリア / 骨格筋 / 運動 / 脂肪酸代謝 |
Research Abstract |
平成23年度は、運動中の乳酸産生の抑制が、運動によるミトコンドリアの増殖を抑制するのかを主に検討した。まずは、ジクロロ酢酸(DCA)摂取が運動中の乳酸産生を減少させ、体内の乳酸濃度を低下させるのか検証した(実験1)。次に、運動トレーニングを行わせる前にDCAを摂取させトレーニングを行わせると、継続的な運動による適応を抑制するのか検討した(実験2)。 【実験1】ICRオスマウスをDCA群とSaline(生理食塩水)群にわけた。運動10分前にDCA(200mg/kg)もしくはSaline(DCAと同量)を腹腔内注射し、1分間のトレッドミル走運動(40m/min)を1分間休息を入れて10回行わせた。10回目の1分間の運動直後の血中と、腓腹筋白色部の乳酸濃度を測定した。その結果、血中及び筋中どちらにおいてもDCA群で有意に低い値を示した。このことから、DCA群では、運動中の乳酸の産生がおそらく抑えられ、血中と筋中の乳酸濃度が低く保たれたと考えられる。 【実験2】ICRオスマウスをコントロール群、DCA摂取トレーニング群、Saline摂取トレーニング群に分けた。DCAもしくはSaline群のマウスには運動の10分前に摂取させ実験1と同様の運動を週に5日、4週間行わせた。4週間後、腓腹筋を摘出し検討したところ、ミトコンドリアのβ酸化に関わる酵素であるβ-HAD活性と脂肪酸の取り込みに関わるFAT/CD36タンパク質量がSaline摂取トレーニング群でのみコントロール群と比較して増加した。しかし、DCA摂取トレーニング群では、どちらも増加を示さなかった。 これらのことから、運動中の体内の乳酸の産生や濃度の低下が、骨格筋の脂肪酸代謝に関わるタンパク質のトレーニングによる適応を阻害する可能性が考えられた。このことは、乳酸がミトコンドリアや脂肪酸代謝に関わるタンパク質の発現メカニズムに関わっている可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は、DCA摂取による運動中の乳酸濃度の低下が、運動によるミトコンドリア増殖に影響を与えるのか明らかにすることを目的に研究を行った。DCA摂取によって、運動後の血中、筋中の乳酸濃度が減少したことと、継続したDCA摂取による運動トレーニング後、トレーニングによる骨格筋の適応が抑制されたことが明らかになったことから、本研究は計画通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度では、real time PCRを用いたmRNAの測定を行うことができなかった。必要な消耗品やPrimerなどはすでに購入済みである。さらに同じ研究科に所属している石井直方研究室の川田茂雄特任講師にRNAの抽出方法とmRNAの測定方法をご教授して頂いた。24年度前期には、mRNAの測定を行い、適応メカニズムを検討する予定である。また、24年度後期には、計画通り乳酸摂取により体内の乳酸濃度と酸化が増加した場合、運動による骨格筋のミトコンドリアの適応に影響を与えるのか検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)