2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工ウイルスによるレドックス病変部位への薬物送達とその治療
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23800045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
戸井田 力 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任助教 (40611554)
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Keywords | ナノバイオ / 医療・福祉 / バイオテクノロジー / 薬物デリバリー |
Research Abstract |
本年度は、機能化ナノカプセルの作製およびその培養細胞系での評価を予定していた。ビタミンA修飾ナノカプセルはラット肝星細胞に強い結合を示したが、ラット正常肝臓細胞への結合は認められなかった。ナノカプセルの結合量は、ナノカプセルとビタミンAの間のリンカーの長さが長くなるにつれ増大した。このナノカプセルは肝硬変に代表される肝星細胞の異常が関連する疾患への応用展開が期待される。 肝臓ガン細胞をターゲットとしたナノカプセルを二種作製した。まず、化学結合により肝臓ガンターゲットペプチド(SP94)を修飾したナノカプセル(Hsp-PEG.SP94)はヒト肝臓ガン細胞によく結合したが、正常肝臓細胞や他のガン細胞に結合性を示さなかった。興味深いことに、SP94ペプチドのN末端側を修飾したHsp-PEG-SP94は、C末端側を修飾したHsp-PEG-SP94より高い結合性を示した。その差は最大で10倍であった。この成果は国際誌に投稿中である。別途、遺伝子工学的手法によりSP94ペプチドを修飾したナノカプセル(Hsp-SP94)を作製した。Hsp-SP94も同様のヒト肝臓ガン細胞に対する特異性を示した。興味深いことに、肝臓ガン細胞への結合量はリンカー長が大きくなるにつれ増大した。さらに、低pH環境(細胞内エンドソーム、ライソゾーム)で切断するリンカーを介してドキソルビシンを修飾したHsp-DOXを作製し、その薬効を培養細胞で評価した。ヒト肝臓ガン細胞(Huh-7)に対してHsp-SP94-DOXはフリーのDOXとほぼ同等のIC50値を示した。一方で、正常肝臓細胞に対しては、フリーのDOXより10倍程度高いIC50値であった。すなわち、Hsp-SP94-DOXは、その肝臓ガン細胞特異性により、肝臓ガンに対する薬効を維持する一方で正常肝臓ガン細胞に対する毒性を劇的に抑えることが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ナノカプセルの分子構造の最適化を計画していた。種々のパイロット分子を修飾したナノカプセルの合成・培養細胞系での最適化はすでに終了しており、計画通りに研究が進んでいる。来年度予定していた薬物修飾ナノカプセルの作製もすでに終了した。そこで、この薬物修飾ナノカプセルの培養細胞系での実験を開始し、大方データがまとまっている。さらに、当初予定していなかったナノカプセルの細胞内動態の評価も終了しているこれらのことから、「計画以上に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、培養細胞系でのナノカプセルの細胞結合・細胞内動態および薬剤内包ナノカプセルの評価が終了した。今後は、主に内包可能な薬剤の種類を増やすこと、モデルマウスでの評価を行う予定である。前者に関しては、ナノカプセル内部の遺伝子工学的な修飾により、電荷および親水性・疎水性の最適化を行うことで達成する予定である。後者は、まず坦ガンモデルマウスにおける蛍光修飾ナノカプセルの動態評価を行い、次いで薬物内包ナノカプセルの薬効効果を調査していく予定である。どちらの実験系もおおよそ確立されており、必要な機器も本研究室で保有している。
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