2011 Fiscal Year Annual Research Report
複雑環境における見落としの生起要因の解明と防止方策の提案
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23800047
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
木原 健 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 助教 (30379044)
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Keywords | 見落とし / 視覚的注意 / 奥行き知覚 / 高速逐次視覚提示法 |
Research Abstract |
目に映っていても気づかない「見落とし」がなぜ生じるのかを明らかにすることは、視知覚メカニズムの理解に不可欠なばかりでなく、交通事故の防止や視認性の高いレイアウトの設計など、安全で快適な社会の実現にとっても重要である。ただし、「見落とし」に関する既存の知見は、実験要因以外の要素がノイズとして統制された、単純な実験環境で獲得されてきた。一方、日常の複雑な環境では様々な要素が同時に存在するが、どのような条件が揃った場合に「見落とし」が生じるのかは分かっていない。そこで、単純環境と複雑環境の違いに着目した実験から「見落とし」が生じる条件を特定し、複雑環境での「見落とし」防止につながる知見の獲得を本研究の目的とした。 本研究の目的を達成するため、2つの段階的な目標を設定した。本年度は、第1段階の目標である「見』落とし」に関わる要因の特定について検討を進めた。特に、日常的な複雑環境で頻繁に生じる、複数の刺激が異なる奥行き面に出現する状況について重点的に検討を行った。複数の心理物理的実験を行った結果、「見落とし」の生起頻度は、刺激の奥行き差の大きさに依存する傾向が認められた。この結果は、様々な奥行きで視覚情報が提示される日常においては、単純な実験環境よりも「見落とし」の生起頻度が高いことを示唆する。ただし、実験結果より、奥行き差がわずかに異なる場合は、奥行き方向に応じて「見落とし」の生起頻度が非対称になることも見出された。したがって、奥行き差を適切に調整した表示装置を用いることで、「見落とし」を低減できる可能性のあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の達成目標は、日常的な場面にわける見落とし要因の検討であったが、特に主要な要因と考えられる視覚刺激の奥行き差の影響について複数の知見を獲得できたため、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、本年度は研究計画の第2段階として、より日常場面に近い状況を構築し、その環境下で見落としの生起頻度を調べる実験を行う。また、日常場面に存在して見落としに影響すると考えられる、奥行き要因以外の要因についても平行して検討を進める。一定の成果が得られた時点で、それらを論文に取り纏め、国際査読誌に投稿する。
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