Research Abstract |
320列マルチスライスCTを用いて,嚥下中の誤嚥防止機構となる喉頭閉鎖の3事象(喉頭前庭閉鎖,声帯閉鎖,喉頭蓋反転)を観察し,加齢が嚥下動態に与える影響を検討した.若年群(20-39歳)23名・中年群(40-59歳)29名・高年群(60-77歳)15名を対象にして,5%とろみバリウム溶液10mlの嚥下動態を撮影し,再構成された0.1秒間隔の画像を用いて,舌骨前方上方挙上,軟口蓋挙上,喉頭閉鎖の3事象(喉頭前庭閉鎖,声帯閉鎖,喉頭蓋反転),食道入口部開大の運動開始・終了・持続時間および食塊移動時間を計測した.これらの時間を若年群,中年群,高年群で比較検討した.各年齢群で嚥下動態の順序は一致していたが,運動開始,終了,持続時間に相違がみられ,年齢が嚥下動態に影響することが示された.高年群は若年,中年群に比し,軟口蓋挙上の開始が有意に早まり,軟口蓋挙上,喉頭閉鎖の3事象の終了時間が有意に遅延した.これらの事象は,高年群で嚥下中の咽頭収縮時間の延長を示唆するものであった.この咽頭収縮時間は,加齢による咽頭収縮の低下を代償するものと考察された.これを証明するためには,今後CT評価に咽頭圧測定を同期させ,加齢による咽頭圧変化について検討する必要がある. 嚥下中の喉頭の動きは従来の検査法では非常に観察困難であり,喉頭閉鎖のメカニズムについてはこれまで未解明であった.320マルチスライスCTは3次元的に任意方向からの嚥下動態分析が可能であり,嚥下中の喉頭閉鎖の観察が可能である.本研究で,従来までは推定の範囲内であった健常者の嚥下動態の理解がすすんだことは,今後,障害のメカニズムの理解や嚥下訓練法構築の前進となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた健常被検者の嚥下動態については結果をまとめ,学会にて報告した.また既に,今後の研究の対象と予定しているワレンベルグ症候群患者の撮影を開始しており,2年目で予定している嚥下障害患者の嚥下動態についても一定の成果を得る事ができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ワンレベルグ症候群患者を対象として,同様にCTを用いて希釈造影剤の嚥下を撮影し,喉頭閉鎖を中心とした嚥下諸器官の動態を計測する.希釈造影剤のとろみの濃度や量は,個々の患者にあわせ,あらかじめ嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査で誤嚥なく嚥下可能なものを用いる.
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