2011 Fiscal Year Annual Research Report
カーネル法と制御ポリシーを用いた中長期的投資戦略最適化
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23810007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高野 祐一 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (40602959)
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Keywords | 多期間ポートフォリオ / 数理最適化 / 制御ポリシー / カーネル法 |
Research Abstract |
ポートフォリオ最適化問題とは「低リスク」と「高リターン」を目標として、各金融資産への投資決定を行う問題である。本研究では、中長期的な資金運用を想定し、計画期間の途中でのリバランス(投資の組み替え)を含めて投資決定を行う「多期間ポートフォリオ最適化問題」に取り組んだ。 本研究では、多期間ポートフォリオ最適化のための基本的なモデルである「シミュレーション型多期間確率計画モデル」に対して「投資決定を表す関数」である制御ポリシーを導入することで、資産価格変化に対応して動的にリバランスを繰り返していく最適化モデルを定式化した。しかしながら、このモデルは制御ポリシー(関数)の最適化問題となるために求解は困難である。そこで本研究では、非線形データ解析のための手法であるカーネル法を利用して、求解が比較的容易な凸2次最適化問題に問題を変形した。さらに、大規模な問題を解くことを想定して、L1ノルム正則化と呼ばれる手法を用いて最終的に提案モデルは線形最適化問題として定式化した。 本研究では実データからパラメータを推定し、ベクトル自己回帰モデルによって資産価格変動のシナリオを多数発生させて運用成績を検証した。検証の結果、「基本のシミュレーション型モデルと比較して、制御ポリシー最適化モデルの運用成績が優れていること」、「非線形関数の制御ポリシーを利用することで、特に高リターンの重視の場合に運用成績を改善できること」などが分かった。 本研究は多期間ポートフォリオ最適化をベースにして、制御理論と機械学習理論を融合させた研究であると言える。また、実用的には、機関投資家や個人投資家が本研究の成果を活用できるのはもちろんのこと、長期的に安定した資金運用が求められている年金の運用などでも本研究で提案する手法は有用だと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーネル法を利用した側御ポリシーによるポートフォリオ最適化モデルの構築に成功し、数値実験によってその有効性までも検証できたことは当初の計画以上である。しかしながら、大規模な最適化問題を扱うためにはまだ求解アルゴリズムを改良する必要があり、これらを考慮しておおむね順調だと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果によって、提案モデルの有効性をある程度検証することができた。しかしながら、実用化を想定すれば、より詳細な数値実験を行って提案モデルの特徴と有用性を検証していく必要がある。 また、提案モデルの運用成績が優れていることは検証できたが、大規模な最適化問題を扱うためにはまだ求解アルゴリズムを改良する必要がある。カーネル法を用いた機械学習手法では分解法などの効率的な計算アルゴリズムが利用されており、これらを参考にして、大規模な投資決定問題を実用時間で安定して計算できるような解法の構築を目指す。
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