2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンバリアントH2AZのアセチル化を介した損傷クロマチンのダイナミクス制御
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23810015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 涼 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (70614155)
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Keywords | TIP60複合体 / ヒストンH2AX / ヒストンH2AZ / アセチル化 / DNA損傷応答 |
Research Abstract |
本研究計画では、ヒストンバリアントH2AZのアセチル化に注目し、損傷クロマチンのダイナミクス制御を明らかにすることを目的としている。これまでにTAP54複合体にはH2AZが含まれていること、またTAP54複合体はTip60ヒストンアセチル化酵素が含まれていないのに関わらず、ヒストンアセチル化活性を持つことを明らかとしている。これらのことからTAP54複合体に含まれるアセチル化酵素がH2AZをアセチル化する可能性を考え、このアセチル化酵素を同定することを計画した。平成23年度は、HeLa細胞からTAP54複合体を精製し、マススペクトロメトリー解析を行った。その結果、TAP54複合体の中から、いくつかのアセチル化酵素を同定することに成功した。これら候補のアセチル化酵素がH2AZのアセチル化、DNA損傷修復に関わることを解析するため、Microirradiationとchromatin immunoprecipitation (ChIP)の実験系の立ち上げを行った。前年度の成果によりこれらの系はすでに確立され、これらの方法を用いることにより、これらアセチル化酵素が、DNA損傷応答に関わることを解析することが可能となる。またこれらの実験系はDNA損傷応答研究において非常に有用なツールであり、本研究のみならず他の研究計画における解析にも必須である。今後これらの系を用いて、これらアセチル化酵素のDNA損傷応答への関与を解析すると同時に、H2AZのアセチル化に関与するかどうかをIn vitro HAT assayにより検討する。さらに、ChIPを用いて、アセチル化酵素のDNA損傷部位への集積を確認すると共に、Tip60のアセチル化変異体を発現した細胞でアセチル化酵素のDNA損傷部位への集積を比較する。これらアセチル化酵素とTIP60複合体の関わりを示すことにより、DNA損傷領域におけるヒストンのアセチル化を介したクロマチンの動的制御機構を明らかとする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、TAP54複合体にTip60以外のアセチル化酵素が含まれていることを明らかとしている。またアセチル化酵素のDNA損傷修復への関与を解析する実験系を確立し、DNA損傷応答への関与を解析し始めている点で、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、研究は当初の予想通りに進展している。今後は同定したアセチル化酵素のDNA損傷への役割を詳細に解析すると共に、アセチル化のターゲットがH2AZであるかどうかの検定を行う必要がある。これらの解析によりアセチル化H2AZを介した損傷クロマチンの意義を明らかとする。TIP60ヒストンアセチル化複合体はヒストンH2AXをアセチル化することによって、H2AXをクロマチンから放出させている。この解析によって、H2AXのアセチル化と、H2AZのアセチル化の関与を示すと共に、これらアセチル化酵素とTIP60複合体のヒエラルキーを明らかとする。
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