2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋表層における有機物分解機構の解明,環境変動に対するその機構の応答解析
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23810022
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
横川 太一 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (00402751)
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Keywords | 有機物分解機構 / 従属栄養細菌群集 / 海洋表層 |
Research Abstract |
海洋表層では,「植物プランクトンによる基礎生産」と「従属栄養細菌による有機物分解」が相補的に働いている.この両者の働きが,生態系および物質循環の恒常的な駆動を維持している.本研究の目的は,この有機物分解過程に注目し,その構造と変動メカニズムの解明することである.具体的には,海洋表層における従属栄養細菌群集の機能に関する定性的な解析とその動態の定量を行っている. 平成23年度は,従属栄養細菌群集の生物量,活性および構造解析用のサンプルを採取し,その時空間パターンの解析を行った.サンプルは,愛媛県近海の伊予灘および宇和海の沿岸環境において平成23年7-12月に行われた計12回の観測で採取したものを使用した.採取した試料は以下の2つの項目の測定に供された.(1)細菌生物量および群集構造解析:細菌生物量は顕微鏡下での計数,群集構造解析は,CARD-FISH法を用いて,主要系統分類群の全細菌群集に対する寄与率を求める.(2)細菌群集の有機物代謝能および代謝量の変動と環境要因(栄養添加,化学物質負荷,捕食)との関係解析. 現時点では,項目(1)の結果から,伊予灘および宇和海周辺の沿岸域において,細菌生物量は,基礎生産者である植物プランクトン生物量の44%(44±56,average±SD,n=69)とほぼ同等であることがわかった.細菌の代謝効率を0.3(30%の炭素が細胞成分となり,70%が呼吸で利用され二酸化炭素となって排出される)と仮定すると,細菌群集は,植物プランクトン生物量を上回る(約1.2倍)量の有機物の循環を沿岸生態系で担っていると推測できる.このことは,従属栄養細菌群集が,伊予灘・宇和海沿岸においても非常に重要な生物群であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた試料採取調査が終了し必要な試料がある.また,調査海域全体の従属栄養細菌群集生物量データから,従属栄養細菌群集の生態系における重要性を実証したこが成果としてあげられる.以上の2点を完了していることから本研究の達成度を「おおむね順調に達成している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,採取した試料あ解析を行い,(1)沿岸環境におおける有機物分解に関わる細菌群集の生物量および活性の時空間分布,(2)細菌群集の有機物代謝量の変動と環境要因との連関の2つを統合し,海洋表層における,従属栄養細菌群集が関わる有機物分解系モデルを構築する.得られた成果を平成24年度,日本海洋学会(平成25年3月)および日本微生物学会(平成24年9月)で発表する.また,国際誌に発表する.
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