2011 Fiscal Year Annual Research Report
先端分析技術による,脳微小領域における虚血に応答した生理活性分子の探索と可視化
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23810027
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 悠毅 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師(非常勤) (30590202)
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Keywords | 質量分析 / 神経科学 / 脳梗塞 / 虚血 / 代謝 / 死後分解 |
Research Abstract |
本研究の全期間内の達成目標は,脳梗塞モデルマウス脳における,虚血に応答した傷害性因子の産生拡散マップの作成である.既知,さらには未知の梗塞巣に蓄積する代謝因子を同定し,これらが梗塞巣を中心としてどの程度離れた領域に分布拡散しているかを,空間的にサブミリスケール~数十μmオーダーで解像して調べる.これらのマップを異なるタイムポイントで作成し,また損傷組織の染色による障害領域評価と比較検討することで,これらの分子の拡散と障害相関を検討する. 本年度は,この目標達成ために必要な要素技術(課題a-b)を確立する. (技術課題a)実験動物から瞬時代謝不活化後の組織摘出>マイクロウェーブによる酵素瞬時不活化(技術課題b)細胞レベルでの局在解析>イメージングMS(IMS)の適用 (a)については,マイクロウェーブアプリケータを導入し,脳梗塞モデルマウスに適用した.これにより,マウス脳内の死後の代謝産物分解をほぼ完全に抑えることに成功した.その結果従来は検出が困難であった既知の高エネルギー燐酸ヌクレオチドや燐酸糖のような,生体内で瞬時に代謝される代謝産物を死後分解の影響を完全に排除して検出することに成功した.さらに本方法でしか検出されない未知の傷害因子候補を検出することにも成功した また(b)のイメージングMS用の質量分析計も,ルーチン実験系として導入した.この結果,(a)で処理した脳虚血モデルマウスの解析に用いたところ,虚血領域に集中して蓄積する既知さらには未知の代謝物群を同定し,蓄積領域を可視化することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標として掲げた技術課題(上述a-b)を達成した.この結果,特に課題(a)の達成による研究の進展が大きく,従来法では死後分解と判別できなかった病態特異的な代謝変動を抽出することができた. さらに,酵素不活化処理のメリットは,従来不可能であった摘出臓器の顕微下での分割操作を可能とした.これが未知/既知を問わない質量分析メタボロミクスによる変動因子群の同定につながり,次年度の課題も既に着手している.
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Strategy for Future Research Activity |
確立した要素技術(a-b)で得られるメリットを駆使し,計画通りに質量分析技術と微小組織採取装置を駆使し,既知または未知の活性代謝産物の"局所"動態を解明する.
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