2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム転写抑制複合体に結合するRNA分子の網羅的解析とその機能解明
Project/Area Number |
23810035
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
増井 修 独立行政法人理化学研究所, 免疫器官形成研究グループ, 研究員 (30579305)
|
Keywords | PRC1/2 / RNA / RIP / Ring1B / ES細胞 / Xist / X染色体不活性化 / 細胞分化 |
Research Abstract |
ポリコーム転写抑制複合体(PRC1/2)はゲノムからの遺伝子転写を抑制することにより細胞の分化や増殖を制御している。研究代表者らは以前にPRC1の機能にRNA分子が関与する事を示しているが、その実体はこれまでによく分かっていない。本研究ではこれらのPRC1結合RNA分子群を、RNA免疫沈降法(RIP)と高速DNAシークエンサーを組み合わせることにより大規模に同定し、それらの性質と機能を明らかにする事を目的とする。研究計画一年目に当たる平成23年度は、PRC1を構成するタンパク質の一つであるRing1Bに対する抗体を用いたRIPを行い、過去のRIPに関する報告を参考にしてRIPの最適な条件を決定した。材料にはマウスのES細胞を使用した。ES細胞を用いる事で、オスとメス、分化と未分化といった差によるPRC1結合RNAのスペクトルの違いを明らかにすることができると期待される。 Xist RNAは不活性X染色体の形成に必須のRNA分子で、分化させたメスのマウスES細胞において不活性X染色体を覆うように蓄積する。一方PRC1も不活性X染色体上に蓄積するということが免疫染色を用いた実験により明らかになっているが、これまでにXist RNAとPRC1の結合を示す報告はなかった。我々は分化させたES細胞を用いてRIPを行い、約50%のxist RNAがPRC1結合画分に回収されてくることを明らかにした。もう一つのPRCであるPRC2がxist RNAと結合するという報告はすでになされており、今回我々が得た結果と合わせて考えると、2つのPRCがそれぞれ同じRNAを介してリクルートされるという従来には無かったモデルが考察され、PRCの局在を制御する新規メカニズムの存在を支持している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した研究内容をほぼ達成できているため上記の自己評価とした。すなわち、RIPの至適条件検討はすでに終了し、高速シークエンサーによる大規模解析も年度内に行われる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度中に大規模なRIPを行い、高速シークエンサーによる解析を行う予定である。高速シークエンサーは研究代表者の所属する理化学研究所に従来設置されているロシュ社のGS Junior、または平成23年度内に設置予定であるイルミナ社のHiSeq 1000を使用する。同定されたRNA分子群の塩基配列について統計解析を行い、それらに共通する塩基配列の特徴を明らかにすると同時に、いくつかのRNAを選び、それらをノックダウンした時に近傍の遺伝子のヒストン修飾やmRNA転写に生じる変化を調べることでそれらのRNAの機能を明らかにする。
|