2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀両大戦間期のフランスにおける言語中心主義の文学の系譜
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23820012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 貴久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (50610292)
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Keywords | ジャン・ポーラン / フランス両大戦間期 / 新フランス評論 / 言語論的転回 |
Research Abstract |
韻文・散文にかかわらず、文学者は、自らの表現媒体である言語をどうみなしているのか。また言語をめぐる意識は作品にいかなる形で反映されるのか。文学と言語の問題は、古典古代の雄弁学・修辞学にはじまり、中世の普遍論争における唯名論、絶対王政期のヨーロッパ諸言語間の翻訳の問題、19世紀のフランスのボードレール、ランボー、マラルメといった詩人達の詩的言語の見直しを経て、20世紀、両大戦間期に登場した文学的前衛、すなわちダダイズムやシュルレアリスム、といった文学運動にいたるまで、様々に変奏されてきた。本研究は、とくに20世紀のフランスにおいて、言語中心主義的な思考の文学における水脈をジャン・ポーランという20世紀前半のフランスの文壇を主導したといってもよい編集者を中心に辿り直すという試みである。 この試みを実行するため、一年目は、資料収集・調査を行った。具体的に二つに分けられる。第一に、ジャン・ポーランの作品・資料の収集である。全集が絶版になり、現在新しい全集が部分的に刊行されているが、書誌にある代表的な作品、および手に入れられる書簡集はおおむねそろえることができた。第二に、ポーランの編集長としての影響力を測る傍証となる『新フランス評論』の調査を行った。彼が編集長職にあった1925年から1939年までの同誌の現物にあたり、寄稿者の名前と作品について確認を行い、また事典やインターネットを活用することで無名の寄稿者の情報を可能な限り調査した。 一年目で行った作業は主にこの二点であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料の収集・およびデータ整理が一年目の計画であり、それについては順調におこなった。しかし、二年目以降の作業の中心となる、資料の分析ははじまったばかりである。すべての資料に目を通し(書簡集・作品)、なんらかの結論を導くにはまだまだ分析は足りていないという認識である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後残っている作業は、引き続き資料調査、および資料分析である。資料調査についてはおおむね範囲を確定し、見通しは得た。資料分析については、漫然とポーランの「思想」という枠組みは用いず、具体的なテーマを設定し、資料の読み込みをより効率的なものとする。具体的には、書簡集に見られる「編集者として内容の介入」および「言語論」について注目することで、目的とする言語中心主義的な思考の抽出が部分的には可能である。
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