2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23820016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤波 伸嘉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特任助教 (90613886)
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Keywords | オスマン帝国 / 正教 / ギリシア人 / 世界総主教座 |
Research Abstract |
本研究は、「長い19世紀」の近代オスマン帝国を、その多民族多宗教的構造に留意しつつ新たな視座から論ずるべく、事例研究として特に正教徒から見た近代オスマン秩序像、正教会から見た近代オスマン国制の実像を考察することを目的としている。そのために特に分析の対象とするのが、イスタンブルの世界総主教座内外の権力構造であり、差し当たっては、19世紀を通じてその運営に次第に影響力を行使するようになった俗人たち、とりわけ銀行家や新ファナリオット、学者の言動に着目する。本研究の初年度である平成23年度には、まずは関連する研究文献及び一次史料の調査及び収集に努め、今後の本格的な研究遂行のための糸口を見出すことを目的とした。ただし平成23年度には病気のために予定していたトルコでの現地調査が不可能になった。そのため、23年度中には関連する資材や研究書の購入を優先的に行なうと共に、収集済み文献の読み込みに時間を費やし、トルコ渡航に必要な経費を翌年度に繰り越すこととした。その後、平成24年8月から9月にかけて、今回の繰り越し分の経費を充当して、トルコ共和国イスタンブルでの史料収集を行なった。この際、首相府オスマン文書館及びアタテュルク図書館で主に調査収集を行ない、前者では世界総主教座内部の紛争をめぐるオスマン政府側の対応を物語る文書の収集を、後者では、同時期のギリシア語の定期刊行物の収集に重点を置いた。ただしこれらの機関では今回の調査のみでは到底その全てを尽くせないほどの関連史料が所蔵されているため、今後とも引き続き調査を行なうことが必要となる。
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