2011 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア帝国併合期の中央アジアにおけるタリーカの研究
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23820017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河原 弥生 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 研究員 (90533951)
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Keywords | 中央アジア / タリーカ / スーフィー教団 / マザール / ロシア帝国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中央アジア・イスラーム史において重要な位置を占めたタリーカ(スーフィー教団)の発展について、ロシア帝国併合期のフェルガナ盆地におけるタリーカの指導者の活動とタリーカの内部構造に着目し、当該時期のムスリム地域社会においてタリーカが果たした役割、タリーカの活動と地域社会の形成・変容との関わりを実証的に明らかにすることである。特に、これまでの研究で力を入れてきた現地調査で収集した史料の分析と公刊に重点をおく。 本年度の第一の目標は、マルギランのスーフィー一族に関する収集史料の研究であった。これについては、19世紀初頭から20世紀初頭にペルシア語、チャガタイ語で書かれた多類型の民間所蔵史料を、文書館所蔵の行政文書、研究機関所蔵の歴史書とともに、総合的に分析し、アメリカで行われたスーフィズムに関するシンポジウムで研究報告することができた。また、これらの文書群すべてをテキスト化して写真とともに出版することができた。 本年度の第二の目標は、フェルガナ盆地現地において、当該一族の子孫から再度聞き取り調査を行い、これまでの研究における疑問点、問題点を解決することであったが、事情(研究代表者の妊娠)により、現地調査は実現できなかった。 そのため、イランを訪れ、研究代表者がかつて日本で出版した中央アジアの18-19世紀のスーフィズムに非常に詳しいペルシア語の歴史書『選史』の校訂本の改訂出版の準備を進めた。テヘランの出版社が出版を引き受けてくれ、来年度中に出版する運びとなった。また、改訂にあたって、イランの歴史研究者たちから有益な助言を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた通り、成果の発表に関しては当初の予定通りに行うことができ、現地調査に関しては若干の変更があったが、史料の校訂本の改訂出版の具体的な準備に入ることができ、結果的に、史料の分析と公刊を主体とする本課題研究の趣旨に沿う研究を進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に出版した『マルギランのマフドゥームザーダー族に関する民間所蔵史料』(英語)に基づき、アメリカのシンポジウムで研究発表した「マルギランにおけるワリー・ハーン・トラの聖戦:コーカンド・ハーン国におけるマフドゥームザーダー族に関する一考察」(英語)の内容を更に発展させ、英語で研究論文を完成させる。本論文は、シンポジウムの報告論集に収められる予定である。 平成24年度には現地調査を実現させ、マフドゥームザーダー族の他の分派の活動について調査を行う。 また、『選史』の校訂本の改訂版の作成にも取り組み、平成24年度中のイランでの刊行を目指す。
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Research Products
(2 results)