2011 Fiscal Year Annual Research Report
条里地域におけるHistoricalGISによる景観復原の試み
Project/Area Number |
23820032
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 良美 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 特任助教 (00612334)
|
Keywords | Historical GIS / 条里地域 / 条里プラン / 荘園図 |
Research Abstract |
本年度は、条里地域の歴史地理データベースを構築するために、まず、畿内・瀬戸内・北陸・北九州の各地について既往の条里復原案や絵図・古地図の比定案などをもとに、坪を単位とする条里モデルデータをGIS上で作成した。次いで、古代から中世にかけて作成された条里坪付記載のある絵図・古地図のデジタル化を行い、図中の坪付と条里モデルデータをもとに、位置情報を与えてGISデータ化した。また、図中の文字による記載はテキストデータ化し、条里モデルの属性情報として格納した、これにより、絵図・古地図に描かれた山・川などの景観要素と現在の地物の位置関係等についてGIS上での比較検討が可能になった。さらに、坪付呼称を含む文献史料であれば条里モデルに関連づけることでGISデータとして扱うことも可能となり、これら史料のテキストデータ化および条里モデルへの関連づけに着手した。 文献史料に記載された地名も位置情報の手がかりとなるため、条里復原図や小字図が刊行されている地域について小字データベースを作成した。そのほか一部地域では地名資料として公図などを収集しつつある。そのうち旧越中国域では公図収載の1つの字が他地域の字に比べ数倍程度の広さがあり、条里関連地名を含む複数の小地名が統合されていることが予想されることから、一部の地域について現地調査を行い、小地名について聞き取り調査を試みた。 このほか検地帳などの地名資料や、埋蔵文化財発掘調査報告書、市町村史などの資料の収集を行っている。 なお、検地帳に残る地名と条里復原図収録の字名をみると、福井市域では一致する例が僅少であるのに対し、奈良盆地では比較的多い。地名の伝承や、時代や地域による公的文書に収載される地名の選択法の違いなど、地名学の観点から興味深い事例であり、いずれ機会を設けて明らかにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗に伴い、資料収集の時期など当初の計画を一部変更した部分もあるが、全体的に見て大きな支障もなくおおむね計画通り進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、畿内、瀬戸内、北九州、北陸の条里地域における古代から中世末の土地利用や集落立地の変遷について、Historical GISデータベース群を作成する。(1)文献史料による士地利用関連史料データベース(2)近世初頭の検地帳による土地利用データベース(3)発掘調査報告書等をもとにした旧河川・道路・建物・埋没水田などの遺構データベース。 このほか、現地調査を行い、微地形等や灌漑水利、地名等について調査を行う予定である。
|