2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツにおけるベートーヴェン作品の解釈と演奏の系譜:後期ピアノ・ソナタを例に
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23820035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 紘子 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 助教 (30545108)
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Keywords | ベートーヴェン / 作品解釈 / ドイツ / オーストリア / エディション / 演奏 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半にかけてのドイツ語圏において、ベートーヴェンの作品がいかにして解釈されてきたかについて研究を行うものである。なかでも、難解とされてきたベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタに関する当時代のさまざまな解釈を採り上げ、作品解釈の特徴や、それと指つかいやフレージングといった演奏指南や演奏実践との関係を調査し、考察することを主目的とした。 1年目である平成23年度においては、主要な研究対象となる19世紀に出版された各種のエディション--「実用版」の代表とされるビューローによる版、ピアニストであったダルベールによる版、音楽理論家として著名なリーマンによるフレージング版、シェンカーによる原典版、同じく原典版と称するクレプスによる版など--の収集を行った。これらの版は、シェンカーの著書『ベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタ校訂版OP.109』のなかで挙げられているものである。したがって、シェシヵーがこれらの版にいかなる評価を下していたかという点から、各版の特徴を読み解く作業を行った。 主として着眼したのは、以下の2点である。1つ目は、校訂者が譜面に何を書きこむかという点である。作者ベートーヴェンが書きこんだもの以外に、とりわけ原典主義者とされるシェンカーがop.109においてどのような書き込みを行っているかを、ビューロー版と比較しつつ調査し、口頭発表を行った。2つ目には指づかいの指示である。原典主義者シェンカーにあっても、ベートーヴェンが指示していない指づかいだけは独自に書きこまれているためである。この指づかいの指示が各版においていかなる意図のもとに行われているが、各版を比較する際の重要な観点となる。それゆえ、各版の指づかいを比較するため、op.109、op.110、op.111、op.101に関して研究協力者の協力を得て、指づかいのデータベース化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の出発点としてピアノ・ソナタop.109を採り上げシェンカーの原典版とビューローらの実用豚との比較を行い、原典主義者シェンカーという従来のイメージに一石を投じるような解釈や校訂手法の揺れを明らかにした。また、シェンカーの著作では他の音楽家の解釈が引用されているが、これらは英訳されていない。平成23年度にop.109の邦訳書を翻訳し終え出版のめどが立ったことは、国内の音楽学研究にとって意義深いことだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の後半に行った指づかいのデータベース化をもとに、各版の指づかいがどのような意図のもとになされているかについて詳細な考察を行い、口頭発表や論文投稿を通して研究成果を広く発信していく必要がある。また、翻訳作業として引き続きop.110の翻訳を計画的に続け、平成24年度中の刊行を目指す。これらのために、データベース化のための作業協力や専門的知識を提供する研究協力者の協力が不可欠であるので、今後も積極的に協力を依頼する予定である。また、自筆譜や筆写譜等の一次資料をすみやかに収集する必要がある。
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Research Products
(4 results)