2011 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代文人の詩文に対する意識について-日中・京阪と江戸の比較から-
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23820037
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 貴奈 長崎大学, 教育学部, 准教授 (10380809)
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Keywords | 日本漢文学 / 日中比較文学 / 中国文学 / 近世文学 |
Research Abstract |
平成23年度は研究計画をもとに、江戸時代中期の漢詩人六如と、六如に才能を認められた中島棕隠の作品を研究対象として読み進めた。特に両者の詩に見られる「我輩」「吾輩」等の「わがともがら」と訓まれる語に着目し、そこから読み取れる「わがともがら」意識とでも名付けられるものについて考察を行った。考察に際してまず中国の詩に見られる「我輩」等の語の用いられかたについて検討したところ、唐代以前にあっては詩人ひとりの作品中の使用例はさほど多くなく、かつ仲間内で作られた詩における使用がほとんどであった。しかし宋代の詩人とりわけ南宋の陸游の用例をみると、唐代までとは異なって用例が増え、かつ仲間内に宛てられたものではない述懐の詩にも用いられており、そこには世間の人と相容れなかったり、古人の詩に耽溺しそこに理解者をもとめるといった詩人像のようなものを読み取ることができた。こうしたことを踏まえ、六如および棕隠の作品に見られる「我輩」等の語について考察を行い、陸游に共通する「詩人」としての自己意識が表れていると結論づけた。研究の成果は9月24日に開催された和漢比較文学会第30回大会において口頭発表を行った。 その他の研究成果としては、六如の読書範囲を明らかにするため『葛原詩話』に引用されている書目一覧の作成を行ったこと(作成途中)、京都・奈良において中島棕隠・村瀬拷亭関連の漢詩文資料を収集したことなどがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずは育児休業取得後ということもあって研究環境がすぐには整わなかったこと、また研究活動スタート支援の内定が8月であったが、年度計画をたてるにあたっては、9月に学会発表予定だったこともあり、1年間を見込んでの計画を作成してしまったため、当初の研究の目的・研究計画に即すると、進捗状況はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、当初の計画に基づいて六如・棕隠の作品の精読を中心に行い、対象をあまり広げずに考察を行いたい。
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