2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23820038
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新名 隆志 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (30336078)
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Keywords | 西洋哲学 / ニーチェ / 悲劇の誕 / 永遠回帰 |
Research Abstract |
今年度は、本研究課題の申請書における研究目的1)「永遠回帰・力への意志について緻密なテキスト読解を行い、近年の研究成果で提示した「力の快」に定位する解釈をより説得的な形で提示する」および、4)「処女作『悲劇の誕生』期の思想と永遠回帰着想後の後期思想との断絶と連関を、「力」の論点から新しい形で鮮明に描く」に関して主に研究を進め、二件の学会発表を行った。 鹿児島大学哲学会における発表「ニーチェ解釈における「力の快」の射程」では、主として研究目的1)に即した成果を発表した。研究計画1)、2)に基づき、永遠回帰および力への意志思想に関わる重要テキストを「力の快」の観点から解釈し、この解釈が過去の通説的解釈における問題点を解決するより説明能力が高いものであることを示し、その解釈としての優位性を明らかにした。 西日本哲学会における発表「悲劇の快をめぐるニーチェ思想の決定的転回」では、主として研究目的4)に即した成果を発表した。研究計画4)に基づき、『悲劇の誕生』の作品理解を通して、初期と後期の悲劇観の変化が「力」の論点の有無において明確に捉えうることを明らかにし、かつこの変化と永遠回帰着想が密接な連関をもっていることを示した。また、ニーチェ思想の変化という問題に関する過去の重要な研究成果との対比により、本発表の解釈が従来の解釈以上の説明力と問題解決力をもつことを示した。本発表によって『悲劇の誕生』の本質とそのニーチェ思想上の位置づけがこれまでになく明確化されたとともに、研究目的1)に関連して、悲劇観の変化こそが後期中心思想の核心にあることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究に必要な書籍の購入が遅れたため、また予測していたエフォート率を確保できなかったため、本研究の着手が遅れたこと、またそれに関連して、計画通りの順序で研究を進めることができなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は申請書の研究計颪1)~6)の内、1)、2)4)に基づいた学会発表を行ったが、24年度はまずこの成果を論文にまとめる。残りの計画については3)、5)、6)の順序で本科研費に購入したニーチェ全集および今後購入する研究書をもとに研究を進める。これらについても今年度できるだけ研究発表の機会をもち、来年度に論文の形にすることを目的とする。
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