2011 Fiscal Year Annual Research Report
コーパスに基づく『元朝秘史』モンゴル語漢字音訳方式の研究
Project/Area Number |
23820042
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
孟 達来 島根県立大学, 総合政策学部, 助手 (40609913)
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Keywords | 元朝秘史 / コーパス / モンゴル語 / 漢字音訳 |
Research Abstract |
本研究は、『元朝秘史』のモンゴル語と音訳漢字とのパラレルフルテキストコーパスに基づき、音訳において現れるモンゴル語と漢字との対応関係を全面的に分析し、音訳における全ての規則を導出し、音訳方式の全体像を解明することを目指すものである。今までの研究において得られた成果は次の通りである。 1.先行研究による音推定を整理したうえ、本研究が基づく漢語とモンゴル語の音韻体系を推定し、且つコーパスから得られたデータと結合して、「音の対応」に関する規則35種類をまとめ上げた。そのうち、「声母対応規則」は7種類、「韻母対応規則」は21種類、「末子音対応規則」は7種類である。また、モンゴル語音節末子音の表記に入声漢字がよく使われる現象を発見し、音訳には漢字の声母・韻母だけでなく、声調も関与された可能性について検討した。 2.音訳における「音以外要素の関与」について、(1)漢字の意味をモンゴル語の語幹の意味に合わせるケース、(2)漢字の意符をモンゴル語の語幹の意味に合わせるケース、(3)漢字の意味をモンゴル語の接尾辞に合わせるケース、(4)特定の漢字をモンゴル語の特定の語形に用いるケースの4種類に分けてまとめることができ、且つこれら4種類の音訳手法を各々規則としてまとめ上げた。 3.音訳に使われた全807種類の漢字を用例の中で分析し、音訳漢字の使い分けを検討した。 本研究の特色は、漢字音訳の研究に漢字の「声母」と「韻母」だけでなく、「声調」も考慮に入れて検討し、且つ漢字の「字義」と「意符」の音訳への関与についても考察を行い、全音訳規則を導出し、漢字音訳方式の全体像を解明することにある。なお、漢字音訳の研究にパラレルコーパスによる分析の方法を用いることは、本研究の方法論上の特色であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題をスタートするとき、研究に用いるコーパスを既に完成させており、基本データの抽出と分析も一定に進められていた。研究課題採択後、研究の目的に沿って、データ抽出と分析を更に進めてきたため、研究が順調に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、今まで完成した研究成果に対して、不足と不備を補完し充実させていく。また、残されている問題に重点をおきながら検討を進めていく。特に、漢字声調の音訳へ関与の問題を取り上げて、非声調言語であるモンゴル語の漢字音訳において、漢字の声調が一体どのような動きをしているのかについて全面的な考察を行い、その規則性を探る。最終的に、『元朝秘史』の音訳において、漢語の声母・韻母だけでなく、声調も含めた全要素の観点から、全ての音訳規則を導き出し、『元朝秘史』モンゴル語漢字音訳方式の全体像を解明する目的を達成する。
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