2011 Fiscal Year Annual Research Report
語用論的動機付けを必要とする構文の原理的説明に向けた総合的研究
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23820051
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
大澤 舞 東邦大学, 薬学部, 講師 (70610830)
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Keywords | 語用論的動機付け / cause使役受身 / 不定名詞句主語 / トピック性 |
Research Abstract |
平成23年度の研究の目的は、博士論文において提案した「語用論的動機付けを必要とする特殊構文に関する記述的一般化」の妥当性をさらに高めることであった。この目的を達成するため、研究実施計画では、語用論的動機付けを必要とする構文の記述研究を中心に行うこととしていた。この計画に従い、平成24年度の研究につなげるための下準備として、英語の前置詞主語構文(例:*Under the bed pleased the cat.)のデータ収集を行った。また、研究会を通じて日本語学や英語学の研究者との意見・情報交換を行い、今後の研究の見通しをたてた。さらに、語用論的動機付けを必要とする構文のひとつであるcause使役受身文に関して、研究代表者の分析に対する高見(2009)の批判を受け、高見が反例として挙げている不定名詞句主語を伴ったcause使役受身文の本質を考察した。その結果、cause使役受身文における不定名詞句主語は、その形式とは裏腹に、情報構造上トピックとして機能しているということを明らかにした。このことは、まさに本研究が提案する一般化の予測するところであり、従って、高見の挙げているデータが当該一般化に対する反例ではなく、むしろその妥当性をさらに高めるものであるということを論じた。この研究内容を東邦大学教養紀要第43号に発表した。 また、研究代表者のこれまでの分析とは異なった角度から当該一般化の妥当性を裏付ける可能性を有した現象を発見し、これに関する先行研究を調査した。その成果は平成24年度に国内の学会の口頭発表に応募する予定である。 小学校の外国語活動のためのプログラム開発に関する共同研究において、研究代表者の研究成果や言語学的知見を取り入れた考察を行い、その成果をアメリカで行われたeラーニングに関する国際学会で発表した。このことは、研究の社会的有用性と海外への発信という意義、重要性を有している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究機関への着任初年度ということと、薬学部という性質上、言語学関係の書籍や文献がそろっていないということから、環境の整備に時間が取られた。また、研究と教育活動の両立に手間取った。このことから、本年度はデータ収集に終始し、予定していたデータの考察と成果の発表にまで至らなかったため、やや遅れているという判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に収集したデータを考察し、語用論的動機付けを必要とする構文に関する一般化の妥当性を高めていくことを基本とするが、平成24年度は、この研究成果を国内の学会での口頭発表や論文に応募しながら、今回発見した新たな現象についての研究を中心に行う方向に計画を変更する予定である。当該現象は、独立した個別研究として進めることもできると同時に、その成果は本研究の提案する一般化の妥当性をさらに高めるものになると予測されるため、当初の研究計画を変更しても、本研究の目的を達成することができると考えている。そのため、平成24年度は、新たな現象の先行研究の調査を引き続き行い、データを集め、考察を深めていくことを中心に行う。
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Research Products
(3 results)