2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23820055
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小島 智章 早稲田大学, 演劇博物館, 助手 (10611147)
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Keywords | 日本文学 / 演劇学 |
Research Abstract |
本年度は研究費の使用開始時期が遅かったため、研究計画の予定を変更せざるを得なかったが、冬季休業期間中に3回の研究出張を行ない、近松の近代受容に関わる諸資料の調査・収集を行なうことができた。 大阪出張では、大阪市立中央図書館に奴蔵される近松曲譜入り浄瑠璃本や近代の大阪における近松受容に関わる記事を掲載する雑誌類の調査・収集を行なった。また、国立文楽劇場図書室において、浄瑠璃研究者、吉永孝雄の旧蔵資料や、戦前に近松研究者、木谷蓬吟とともに近松曲の復曲活動を行なっていた竹本錦太夫旧蔵本の調査を行なった。 京都出張では、京都府立総合資料館に収蔵される京都発行の雑誌「浄瑠璃世界」を調査し、大正、昭和前期の近松受容に関する記事、義太夫節の演者や上演に関する記事の調査・収集を行なった。 また静岡出張では、近代の近松研究の先駆者、坪内逍遙が熱海市に寄贈した資料について調査を行なったが、従来知られていた以上の旧蔵書籍類が熱海市に寄贈されていたことが判明し、より詳細な調査が必要なことが分かった。 本年度はまた、筆者が発見した二世豊竹古靱太夫(山城少掾)旧蔵資料が、難務先である演劇博物館へ収蔵されることとなり、同資料に含まれる古靭太夫所蔵浄瑠璃本目録に関する調査研究を行なった。豊竹古靱太夫は、近現代の近松作品の伝承、上演を考える上で最も重要な演者の一人であり、同時代の研究者、石割松太郎や鴻池幸武、武智鉄二等に多大な影響を及ぼしていることでも知られている。2011年12月の歌舞伎学会において、同昌録に含まれる近松浄瑠璃本に関する発表を行なったが、来年度は更に、古靱太夫旧蔵資料から明らかとなった近松作品の伝承・上演に開する新事実について研究発表を行なう予定にしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
補助金の交付時期が例年に比べて遅かったために、資料の調査・収集のための出張の予定を変更せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
譜入り浄瑠璃本、上演台本、近松研究、作品上演に関わる資料の調査・収集を継続し、近松作品上演の金体像を明らかにするとともに、文楽を中心とした作品毎の上演史研究を行なう。また、同時代の近松研究と作品上演との相互影響関係について考察し、「演劇」としての近松受容の実態をより具体的に明らかにする。
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