2012 Fiscal Year Annual Research Report
非常時のメディアにおける表現の自由について―谷崎潤一郎訳源氏物語を一事例として―
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23820056
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西野 厚志 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (00608937)
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Project Period (FY) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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Keywords | 近代における古典受容 / 源氏物語 / 言文一致 / 日本語学 / 山田孝雄 / 谷崎潤一郎 |
Research Abstract |
本研究課題は、谷崎潤一郎による「源氏物語」の現代化を中心に、近代における古典受容が含み持つ「物語文学/近代小説」、「音声言語/書記言語」、「伝統/近代」といった矛盾、あるいは「表現の自由」と「規制」といった現在にも通じる問題に取り組むものである。 課題遂行のために、まず、「谷崎源氏」の校閲者・山田孝雄の著作、特にその「文法論」と「国体論」に表現される思想の具体的な内実を検討し、次に、その思想に淵源する山田の「源氏物語」に対する校閲方針を炙り出して「谷崎源氏」の検閲・削除問題を考察した。最後に、古典受容を背景とする谷崎潤一郎のテクストに見られる細かな表現特質の読解を通して、芸術表現が時代の様相(同時代言説などの環境や検閲などの権力のへ発現)にどう対峙するのか、その現在性(アクチュアリティ)を探った。 「国民国家(ネーション・ステイト)」は、民族性・階級・性差等の諸差異を隠蔽して仮構された幻想に他ならないが、その成立に大きく寄与したのが、国民が共通に使用する均質な言語、すなわち「国語」の普及である。つまり、国家体制の構想と国語の創出には同期性があるのだ。 山田孝雄は日本四大文法のひとつ、「山田文法」によって、日本語・国語学の礎を築いたが、その国語論と国家論にも、成立時期や記述内容において相同性が見られる。一方、新しい言語(日本語・国語)の創出は、小説表現において「言文一致」(音声言語と書記言語の齟齬の解消)という理念として追求されたが、一見すると美学的なその要請も、以上の「国家=国語」の創造という政治的な文脈ともちろん無関係ではなかった。後に「源氏物語」の現代化で、微妙な齟齬をはらみつつ協働する山田孝雄と谷崎潤一郎が、「日本語・国語」の成立という同じ文脈を共有しながらも、それぞれ異なった対応を示していたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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