2011 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス期フィレンツェにおける修道院聖堂主祭壇周辺装飾に関する研究
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23820060
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
伊藤 拓真 恵泉女学園大学, 人文学部, 助教 (80610823)
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Keywords | フィレンツェ美術 / ルネサンス美術 / 宗教美術 / ドメニコ・ギルランダイオ / サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂 |
Research Abstract |
フィレンツェ都市部の修道院聖堂において、15世紀後半から16世紀前半に行われた主祭壇周辺(主礼拝堂など)の装飾を多角的・包括的に論じることを目的とした本研究の初年度では、主たる研究対象であるトルナブオーニ家礼拝堂の装飾についての研究を進めた。研究を進めるにあたっては、R・ハットフィールドなど研究によって知られていた古文書を本研究の観点から精査しなおすと共に、現地に残された作品、および各地の美術館に所蔵される作品に対しての実見調査を行った。特に、ベルリンの国立博物館群に所蔵される関連作品については、美術館側の協力を得て、既存の資料の収集および写真撮影などを行った。また装飾を行ったギルランダイオの関連作品についても、検討を加えた。 上記の結果、当礼拝堂のために制作された両面祭壇上画の構成を再考した。祭壇上画だけではなく、関連する壁画装飾などの関連古文書の内容を吟味した結果、祭壇画の図像内容は礼拝堂の周囲を飾る壁画の図像内容と密接な関係をもっていることを突き止めた。その結果、現在、一般に受け入れられているC・ホルストの祭壇画再構成案についての修正を検討した。また比較例として、前後の時代に制作された祭壇画や礼拝堂装飾との比較を行った。特にサンタ・トリニタ聖堂(フィレンツェ)の諸礼拝堂、サンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂(フィレンツェ)の両面祭壇画、フィリッポ・ストロッツィ礼拝堂(フィレンツェ)、ローマの15-16世紀の礼拝堂装飾やそれに関連する事例を重点的に検証し、必要な作品に関して展覧会などの機会を利用し実見を行った。トルナブオーニ礼拝堂の祭壇上画に関する研究成果は現在論文化の最中であり、2012年度中に口頭発表などの機会を得て発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連の文書や関連作品についての先行研究は既に精査し、対象とするテーマに対する新知見を得るとともに、次年度以降の方向性を定めることができた。関連作品が各地の美術館に散在しているため、作品の調査の調整にやや時間がかかっているが、おおむね想定した範囲内で進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
各地の美術館に散在する作品の調査を進めるとともに、同時代、前後の時代とのより一層の比較検討を行った上で、経時的・地理的広がりのなかで対象を位置づけていくことが必要である。本年度は特に両面祭壇画の問題分析を通じ、礼拝堂内での視点・光源の問題について多くの知見を得ることができたため、次年度の研究のなかではこれをより積極的に活用していくことを考える。そのためには、研究の主テーマの主祭壇周辺とあわせて、関連する諸礼拝堂の装飾もより広範に考察していく必要がある。また本年度得られた知見を発表していくことも次年度に必要である。
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