2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23820062
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕子 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (50434569)
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Keywords | モダニズム / ヴァージニア・ウルフ / 身体表象 / 原始主義 / 20世紀初頭イギリス文化 / セルゲイ・ディアギレフ / ロシア原始主義 |
Research Abstract |
本研究は、1910-20年代モダニズム期イギリスの身体表象における原始主義を、この時期の文学、身体文化、芸術との関連から検討するものである。本年度は、文学作品中の原始主義的身体のイメージについて調査を進めるとともに、まずは、本研究主題にまつわる資料を多く所蔵する、サンクト・ペテルブルク国立演劇音楽博物館およびロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館内演劇図書館において、ディアギレフ主宰ロシア・バレエに関する調査を行った。こうした調査により本年度は以下のような研究成果を得た。1)Virginia Woolfの文学作品、The Voyage Outおよび同時代のフロイトの著作における原始的イメージと女性の描く身体イメージとの関係を考察した。その意義は、文学および精神分析のテクストを並置して分析することにより、1920年代の原始とセクシュアリティのイメージの相関性を明らかにしたことにある。2)後述雑誌論文では、イギリス・デイリー・メイル『理想のホーム・ショー』という特異な大衆向け文化的行事に着目し、100年前に始まったこの住まいの博覧会における、原始的身体イメージとの比較的視点から、住まいの空間創造とそれに必然的に関わるショッピング空間における身体のイメージの変遷を追った。20世紀における博覧会空間と身体と関わりの一側面を明らかにした点で重要である。3)研究発表予定の「Body Movement and the Modernist Dance in The Waves」は、ロシア・バレエ団によって表現された身体イメージと小説作品内部における身体観との相互関係から、モダニズム期の原始主義を新たに位置づける。その意義は斬新な小説技法による文学作品内の身体表象とロシア原始主義との関わりを探ることにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学研究費の交付より7カ月間という、比較的短い期間での研究活動には限界があるが、およそ研究計画どおりに、調査は進み、本年度の研究目的は、おおむね研究成果に示したとおり、達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、研究計画に示した通り、今後、再度の海外調査により資料収集を完了し、資料の分析結果を、学会発表、および学会誌への投稿によって発表する予定である。研究計画の変更点は、23年度予定していた、モスクワのパフルーシン演劇博物館資料調査を、24年度予定のサンクト・ペテルブルクの国立演劇音楽博物館での調査と入れ替えたことである。その理由は研究課題を実証する資料がより多い後者での調査を優先したことである。また、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウス資料館での調査は、文書館の改修工事のため延期となり、24年度に実施する予定である。
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