2011 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代における日本の朝鮮植民地統治構造形成に関する研究
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23820068
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小川原 宏幸 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教 (10609465)
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Keywords | 朝鮮 / 植民地統治 / 衡平運動 / 民衆運動 / 暴力 |
Research Abstract |
本研究は、植民地支配の構造、特にその本質である暴力の発動過程を明らかにするため、支配の合意調達をめぐって形成される植民地権力と在地社会との相克状況を明らかにすることを目的としている。特に、朝鮮民族と共有しうる政治文化の創出が模索されたと見ることが可能な「文化政治」という植民地統治形態を取り上げ、支配のヘゲモニーをめぐる植民地権力と在地社会との対立・「協力」関係を考察し、朝鮮社会と共有できる政治文化を創出しようとした総督府の政策と、それへの朝鮮社会の動向をあわせてみていく。平成23年度は特に、衡平運動という朝鮮の身分解放運動に着目し、同運動に随伴して発生した朝鮮被差別民に対する朝鮮民衆の暴力事件について、朝鮮語新聞を中心に調査を行った。民衆の暴力事件は、従来の研究では啓蒙の対象としてのみ取り扱われてきたが、朝鮮内に存在した差別構造に立脚しながらも、暴力の衝動を内包させていた当該期民衆の心性の所在を端的に表すものと見ることが可能である。したがって伝統的差別構造が日本の植民地支配過程においてどのように展開・変質したのかを明らかにし、総督府権力、社会主義者、身分解放運動勢力が朝鮮民衆を挟撃する状況を解明することは、植民地権力のみならず、(国民としての)民族解放運動勢力からも排除されていった植民地支配における重層的な暴力構造を動態的に把握することにつながる。つまり、朝鮮の被差別民によって展開された衡平運動を取り上げるなかで、その展開過程で明らかになる伝統的差別と植民地権力による分断の様相を考察し植民地統治の構造の一端を明らかする必要がある。衡平運動について、先行研究調査、資史料調査は終了したものの、いまだ論文としてまとめる段階に至っていないため、平成24年度内に研究成果として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
その一因として、研究申請後に発生した校務の重複による多忙化、子の出生に伴う生活面の変化が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究の遅れを取り戻すべく、平成23年度に行った調査を早い段階にまとめるとともに、自治運動をめぐる権力状況に関する研究を開始する方針である。
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Research Products
(4 results)