2011 Fiscal Year Annual Research Report
倒産前対抗要件具備行為の倒産手続内処遇に関する研究
Project/Area Number |
23830003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲垣 美穂子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教 (00612467)
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Keywords | 対抗要件 / 否認 / 債権者平等 / 国際情報交換(フランス・アメリカ) |
Research Abstract |
本研究の目的は、対抗要件否認規定(破産法第164条)の適用範囲を画定することにある。 かかる研究目的達成のため、平成23年度においては、当初の研究計画通り、対抗要件否認規定(破産法第164条)の母法であり、破産宣告直前の担保権登記を無効とすることができる旨定める1838年フランス商法典448条2項の適用状況解析に注力した。かかる手法による研究は従来行われてこなかったものである。その結果、(1)その当初の立法趣旨は、担保権登記を遅延させることによって債務者が財政的に健全であるかのうような外観を作出させ、そのような外観が第三者から、正当に登記されていれさえすれば与えなかったかもしれない誤った与信を引き出すことに寄与する可能性があるため、担保権登記の遅延をもってそのような外観作出に加担した詐欺的行為であると推定し、これを無効とすることで一種のサンクションを課すことにあること(2)もっとも、実際の448条2項運用状況の検討において、このような立法趣旨は貫徹されていなかったこと、つまり、448条は全ての抵当権登記、先取特権登記を適用対象としているのではなく、448条2項が適用されない抵当権登記、先取特権登記があったこと、それらが448条の適用対象となるかどうかについての説明は、問題となる抵当権、あるいは先取特権の権利の性質に応じて異なるものの、概ね次のような一応の基準に従って適用対象範囲を決していたこと、すなわち、当該抵当権あるいは先取特権が、登記前にもともと他の債権者との関係でその優先権が確保されており、登記はその優先権の順位を保存するものとしての性質を有するのか、あるいは登記がなければ債務者の他の債権者に対して優先権を主張できないような性質の抵当権、先取特権について、登記により債権者は新たにその優先権の順位を得ることができるのか、という基準に基づいて判断されていた、との知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画によれば、平成23年度は1838年フランス商法典448条2項の適用状況を解析することに注力することを予定しており、若干の文献の読み残しがあるものの、概ね研究計画に従い順調に進んでいるものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上述に記載の1838年フランス商法典に関する分析を終了させるとともに、アメリカ連邦倒産法の倒産前の対抗要件具備行為に対して厳しい態度を表明する一連の規定の分析を行うことで、1838年フランス商法典から得られた知見の現代的意味を探る。更に、フランス人研究者との研究交流において指摘された現行フランス法の対抗要件の無効に関連する規定に関し、若干の分析を行うことで、現代的意味の観点からの研究を補う。
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