2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカン型オプションに対する解析的価格評価方法の構築
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23830009
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹原 浩太 筑波大学, システム情報系, 助教 (70611747)
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Keywords | アメリカン型オプション / 漸近展開法 / 解析近似解 / 数値解法の高速化 / BSDE |
Research Abstract |
当研究は、「アメリカン型オプション」と呼ばれる金融派生証券について、その解析的な評価方法の確立を図るものである。当該証券は、近年それ自身の流動性が高まるだけでなく、これを内包する証券・契約が多くなっていることから実務的には非常に重要である。にもかかわらず、これまで(様々な実務的要請を満たすような)一般的な仮定の下での高速な評価が大変難しく実務・学術の両面から大変重要な問題であった。こうした問題を解決すべく、当研究ではこのアメリカン型オプションの解析的評価について、学問的にしっかりとした基礎に拠りつつ実務においても利用可能な速度・精度を有する方法を整理・構築するものである。 なかでも今年度は、「漸近展開法」と呼ばれる方法を「単純な1次元Black-Scholesモデル下」においてこの問題に応用した先行研究に着目し、その結果や洞察の多次元問題への拡張を考察した。また、その結果いくつか考えられた方法や既存の数値的な計算方法等の有効性を比較するプログラムを作成し、いくつかの試験的パラメータ下での数値実験を開始した。特に本手法では、「アメリカン型オプション」の価値を「保有価値(行使を先延ばしにすることで生じる価値)」及び「行使価値(証券を直ちに行使することで得られる価値)」に分解し、そのうち「保有価値」の部分を漸近展開法によって近似するアプローチを取っている。こうした問題の多次元への拡張は決して自明ではなく、実務的な要素に加えて学問的にも大変意義深いと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度目標としていた、「アメリカン型オプション」の解析的価格評価に対する漸近展開法を用いたアプローチの多次元への拡張において、ある程度有効と思われる手法を構築できたと考えられ、その確認を行うためのプログラムも作成が進んでいる。また次年度の研究に向けた事前調査も並行して進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの計画通り、(1)本年度得られた「漸近展開法」に関する既存アプローチの拡張成果の有効性をプログラムによる数値実験等を通して確認していき、またこれと並行して(2)「アメリカン型オプション」と密接に関連のある「後ろ向き確率微分方程式(Backward SDE,BSDE)」の解に対する解析的手法を考察し、その応用としての「アメリカン型オプション」の解析的価格評価を考察・構築していく。また、研究の進展状況によっては厳密な解析的手法のみでなく、数値的手法との組み合わせによる高速化等も検討することとする。
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