2011 Fiscal Year Annual Research Report
福祉国家再編期の自治体における政策実施の多様性の要因の解明
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23830015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒見 玲子 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (20610330)
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Keywords | 要介護認定 / 介護保険 / 就学前教育 / ガバナンス / インタビュー調査 / 公共政策 / 介護認定審査会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、要介護認定および保育所の入所判定の政策実施過程を分析し、行政組織外のアクターがどのように影響を与えるのか、ガバナンスにおける資格認定業務の実態を明らかにすることであった。初年度は研究計画通り、①最新の先行研究の整理、概念の整理②予備的なヒアリング調査による実施過程の把握、調査自治体の選定、データの整理③予備調査や文献調査等からゲーム理論を使って、サービスの対象者だけではない行政組織外のアクターの行動が組織内での意思決定や行動に及ぼす影響について検討を行った。具体的には、①の先行研究の整理について要介護認定業務に関しては既存の先行研究だけでなく実務家向けの雑誌のバックナンバー等を検討し、論点の整理に努め、保育行政についてもこれまでのデータを見直し、論点を抽出した。第二に、②予備調査として、都内における審査会委員経験者へのスノーボールサンプリング方式によるインタビュー調査、さらに要介護認定の二次判定の1次判定からの変更率が重度軽度双方に大きい神奈川県藤沢市、双方小さい福井県内の自治体、重度変更率が大きく軽度変更率が小さい千葉県流山市、など統計的数値において外れ値を取る自治体の調査を行い、仮説の導出を行った。その結果、要介護認定業務のプロセスのうち、審査会の部分では、行政の担当者が、審査会委員に対してどのように申請者の情報を伝えているのか、さらに行政と審査会委員を推薦する団体との関係性等と行政の担当者の専門性による評判などが合さって審査の在り方に影響を与えていることが分かった(2012年度初頭の公共政策学会で報告)。また重点調査自治体として福井県でアンケート調査を行うことに決定した.第三に、予備調査からわかった③の行政と認定審査会の意思決定に関する理論モデルの構築として、ゲーム理論を用いて整理を行ったがこれは次年度に精緻化する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するために研究計画で達成した3課題については、順調に作業ができた。特に、予備調査については繰り越しの原因ともなった審査会データの入手により、当初の研究計画とは異なり、年明けから調査がスタートしたが、そのおかげで最も適切な自治体にヒアリングすることができた。さらに、調査対象自治体とも信頼関係ができ、次年度に実施するアンケート調査への事前調整が成功した。この進展状況で次年度も研究が進めば、期待される成果を出すことができると予想できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、まず、福井県内の各保険者の協力を得ながら、要介護認定者名簿から抽出した約1150名の認定者の家族を対象に、アンケート調査を実査する。さらに関東圏での認定調査員や家族へのヒアリング調査を進め、認定調査員へのヒアリング調査とアンケート調査の整合性を確認し、理論仮説のブラッシュアップを図る。
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