2011 Fiscal Year Annual Research Report
「コンセンサス標準形成過程における戦略的マネジメント」に関する研究
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23830019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
糸久 正人 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特任助教 (60609949)
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Keywords | コンセンサス標準 / 標準化マネジメント / 製品開発 / 組織間協力 / 自動車産業 |
Research Abstract |
本研究では、欧州主導の標準化に日本の産業がどのように対処すればよいのかと指針を得ることを目的としている。そうした課題を考えるために、複雑化が進展する自動車産業の車載ソフトウェアの標準「AUTOSAR(Automtive Software Architecture)」を対象に、まずは欧州の標準化コンソーシアムの実態調査を行った。その結果、標準化を推進するに当たり、標準のユーザー《BMW、Daimlerなど)と標準のサプライヤー(Bosch、Continenta1など)の間で、新興国ユーザーや補完市場まで含めた標準化のビジネスモデルを構築し、標準領域に関するコンセンサス形成の基盤となる互恵性が達成されていることが明らかとなった。次に、そのような欧州主導の標準にする戦略的行動と各社の知識量の関係を日欧ECUサプライヤー13社に対するアンケート調査と標準化領域の各社の特許データから分析を行った。その結果、日本の自動車メーカー/サプライヤー各社は、標準化コンソーシアムには参加するものの、既存の知識(レガシーシステム)の多さが足かせとなり、標準には容易に移行することができないでいる。もちろん、標準に移行することが必ずしも必要というわけではないが、長期的な視点で見れば、少なくともすべて自社内で抱え込むのではなく、競争領域と非競争領域の切り分けが重要となる。ことさら、日本の自勲車産業は、各系列ごとに独自システムで競争を繰り返しており、今後のグローバル展開を考慮すれば、こうした標準化への対応を考えることは政策的にも実務的にも重要な課題であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた特許データと取引データを使ったネットワーク分析「自動車産業のECUに関連するエコシステムの把握」の成果発表(学会発表)は平成24年度にずれ込んだが、それ以外はフィールド調査等、おおむね順調に進展している。具体的には、ドイツ人研究者と連携しながら、欧州自動車メーカー、サプライヤー、ッールベンダー等のインタビュー調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は日本、欧州に加え、中国自動車産業の実態調査を実施する予定である。なぜ中国を見るのかと言えば、車載ソフトウェアの標準AUTOSARの普及先として、新興ユーザーが想定されているものの、実際に現地に行って、そのような標準に対して、どのような戦略的対応を行うのかという点を明らかにするためである。そのために、中国人の自動車産業研究者と連携しつつ、現地調査を実施する予定である。
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