Research Abstract |
健康は老若男女間わず私たち人間にとって普遍的な問題であり,Nature誌による「社会科学が取り組むべき10の課題」の筆頭にも,健康の問題が掲げられている(Giles,2011)。世界保健機関(WHO)の定義によると,健康とは,「身体的にも精神的にも社会的にも安寧な状態にある」ことを指す。 急速な勢いで進行する現代の超高齢化社会において,身体的な健康の維持および増進させるための個人的な要因として,何が必要とされるのか。近年,パーソナリティ特性は,問題行動や精神病理的な症状をはじめとする心理学的な変数以外にも,寿命や身体的な健康などの社会疫学的な変数に対しても有意な予測力を持つことが示されている(Robert et al.,2007;高橋他,2011)。 しかしながら,これまでに発達パーソナリティ心理学の見地から健康科学に対して提供されてきた知見にはいくつかの限界点が見受けられる。よって,それらのいくつかの限界点を乗り越えて,パーソナリティ特性と身体的・精神的・社会的健康の関連性の全体像を把握するための新たな知見の蓄積を開始した。 とりわけ,平成23年度においては,まず,パーソナリティ特性のひとつである勤勉性(conscientiousness)が身体的な健康感に与える媒介効果について明らかにし,Psychology and Health誌に採択された。また,パーソナリティ発達についての英語総説論文をJapanese Journal of Personality(パーソナリティ研究)誌に執筆,採択された。さらに,近年発展著しい統計手法のひとつである,潜在成長混合モデリング(growth mixture modeling)による縦断データの分析を,大学生のみを対象としたパーソナリティ特性と精神的な健康に関する3時点の短期縦断データに対して用いて,2件の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた論文出版計画よりも,早めに採択の決まった論文があったため,それに連動して,本研究計画も前倒しを行い,平成23年度の研究において,1,500人規模のオンライン調査を既に実施した。現在は,このデータについて分析を進めており,平成24年度の研究において研究計画に記した調査期間である半年間よりも長い1年の間を空けた縦断調査研究が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現状において,本研究計画については,後ろ向きな計画変更の予定は無い。ただし,これまでに取得したデータの分析から,本研究計画に記したものにそぐわない結果が得られた場合には,ターゲットとするパーソナリティ特性を適切に限定したり年齢層を制限したりするなどして,研究の効率的な遂行を妨げることのないように工夫・配慮を行う。また,必要に応じて,発達心理学・健康心理学・心理統計学など複数の領域の専門家に知識提供を仰ぐことによって研究の進行停滞を防止する。
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