2011 Fiscal Year Annual Research Report
ICTを活用した生物多様性を学ぶ環境教育カリキュラムの開発
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23830048
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
永野 昌博 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (50530755)
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Keywords | ICT / 生物多様性 / 環境教育 / カリキュラム / Web-GIS / データベース / 生態学教育 / 自然体験 |
Research Abstract |
本研究目的は,.世界的喫緊課題である生物多様性の保全を進めていくため,その基盤となる生物多様性の理解を深めるための環境教育カリキュラムの開発である。また,教育とICTを連動させ,生物多様性情報の効果的な収集・共有・利用を提案することも目的とする。 今年度の研究実施計画には5つテーマを挙げている。以下に各テーマとそれぞれの実績を記す。 1生物多様性調査…実地調査では,昆虫類と土壌動物について進めた。昆虫類は大分市郊外のチョウ類の多様性と環境と関連性について調査し,外来植物による在来生態系の撹乱がチョウ類の多様性を低下させていることを示した。土壌動物調査では,土壌動物の多様性と植生管理との関係を調べ,草刈後の草を取り除かないこと,土を踏み固めないことが土壌動物の多様性向上に効果的であると示唆された。 2生物多様性学習カリキュラムの開発・3生物分類技能向上カリキュラムの開発…実践過程において,この2つのテーマは,切り分けての実施が困難であると判断し,同カリキュラムの中で展開した。研究代表者が大分大学で担当する「環境教育演習」などの授業で地域素材を活かした,生物多様性を調べる環境教育,生物多様性に気付く環境教育などを開発した。 4生物多様性学習におけるICT教材の研究…既存のWeb-GISをベースに改良・開発したICTを活用した環境教育の実践を試みた。ICTの強みである,情報の共有化や地図化などにより効果的な環境教育カリキュラムを提案することができた。 5教育効果の測定…上記2,3,4に該当するカリキュラム実施の後,アンケート調査によって教育効果を測定した。結果,生物多様性の重要性に関する理解は深まっており,本研究によって開発された環境教育カリキュラムの有効性が示された。しかし,生物多様性を調べ,伝える技術の習得の高まりは低く,次年度の課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境教育カリキュラムの開発とその実践的研究は,当初の計画の通り実施され,その学習効果も好評であり,また,それらの論文化作業も順調である。また,本研究終了後に計画していた,本カリキュラムの現場教員への普及活動も既に実施しており,これは大きな進展といえる。しかし,ICT教材の開発や広範囲の生物多様性情報の収集はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の大幅な変更はないが,来年度から予定されている高等学校の学習指導要領の改正に伴う,生物多様性の取り扱いや指導内容を十分に理解した上で,カリキュラム案の修正を進めていく。また,それに伴い当初計画では研究終了後に予定していた現場教員への本研究成果の普及を前倒しで進めていく必要があると思われる。また,当初計画では大分県の生物多様性ポータルサイトの構築を大きな目標の一つとしていたが,今年度の調査で,大分県は生物多様性の情報拠点となる大学や博物館,行政施設がないため情報の収集作業に多くの労を要すこと明らかとなった。そのため,総合的な生物多様性ポータルサイトの構築ではなく,ポータルサイト構築に向けた情報基盤の整備を第一の目標として進めていくこととする。
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