2011 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代ニューヨークにおける都市再編の思想史的研究:都市の「美学」に着目して
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23830055
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
笹島 秀晃 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 博士研究員 (30614656)
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Keywords | SoHo / ジェントリフィケーション / ニューヨーク / アート / アーティスト・コロニー / ゾーニング |
Research Abstract |
本年度は、SoHoのジェントリフィケーションの進展における一つの重要な契機である、1971年のニューヨーク市によるゾーニング法の改正(M1-5A,5B地区)をめぐる、市長・都市計画委員会、及び法改正を求めたアーティストの運動を分析した。具体的には、当時のニューヨーク市長であるジョン・リンゼイの発言を書簡、議事録、新聞記事などをもとに調査し、都市計画委員会については、M15A-5B地区のゾーニング法改正の議事録だけではなく、当時の都市計画委員会の委員であるチェスター・ラフキンによるSoHo地区の調査報告書や、Urban Design Teamの一員であったジョナサン・バーネットの著作などを通して、多角的に都市計画行政の特徴を分析した。また、アーティストの運動に関しては、中心的な役割を果たしたArtist Tenant AssociationやSoHo Artist Associationの一次史料を収集し議事録や広報物を分析することで、活動の動機を分析した。調査の結果、ゾーニング法の改正には、アーバン・デザインの推進に象徴される、都市の危機時代の都心再生施策として都市空間の審美化を目指す自治体都市計画の動向と、ミドルクラス化したアーティスト達による居住空間の獲得運動という二つのモメントが明らかになった。 本年度の調査の意義は、これまで<アーティストの集積>→<ジェントリフィケーション>と単線的に解釈されてきた現象の推移を、より詳細に分析するための知見を得たことである。また、ジェントリフィケーションの進展メカニズムにおいては、ディベロッパーの影響が強調される傾向があった。確かに、ディベロッパーの影響は重要ではあるが、その活動のためには、いくつもの都市計画法の改正といった、自治体都市計画における制度的変化が前提条件として存在していた。これまでSoHoの事例における都市計画法の改正がもつ意義はSharon Zukinなどによって指摘されていたが、このプロセスを一次史料にあたりつつ、詳細に検討した研究はなかったため、今年度の研究は重要な意義を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の整理、現地調査の進展により、今までの漠然とした問題意識をより集約させることができた。他方で、問題意識が明確化することによって、当初の研究計画から若干の乖離が見られ、新たな調査課題(1970年代前後のSoHoのアーティスト・コミュニティの実態調査、ニューヨークの都市計画法、市長・市議員の地域権力構造分析など)が生まれたために、2012年中頃に予定している投稿論文の作成に遅れが生じている。新たな問題を着実に研究していくと同時に、当初の予定通りに成果を出すために、短期的な研究課題をより明確化・収斂することが急務となった
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、SoHoのジェントリフィケーション進展における都市計画法の意義を実証的に明らかにするとともに、アーティストが形成したコミュニティそれ自体の実態解明も行う必要が出てきた。この点については、適宜ニューヨーク市のアーカイブを利用し、アーティストの書簡などの一次史料参照しつつ解明していくこととする。
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Research Products
(7 results)