2011 Fiscal Year Annual Research Report
インクルーシブ教育における視覚障害児の支援体制構築に関する歴史的研究
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23830063
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
宮内 久絵 茨城キリスト教大学, 講師 (40530986)
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Keywords | イギリス / インテグレーション / 視覚障害教育 |
Research Abstract |
本研究は、通常学校における視覚障害児の支援体制構築に向けて示唆を得るため、イギリスの比較的充実した視覚障害児の支援体制に焦点をあて、背景にある理念、思想及び歴史的経緯を明らかにすることによって、その実現条件を解明することを目的としている。具体的課題は1970年代に分離教育批判と視覚障害児のインテグレーションを要求し、その後イギリスにおけるインクルージョン導入の先導的役割を担った視覚障害当事者団体、ABAPSTASに焦点を当て、彼らの主張ならびにその背景にある思想・理念を、文献研究およびインタビュー調査を通して明らかにすることである。 初年度は同団体によって政府に提出された一次資料を用いた文献研究を行いABAPSTAS創設の背景と、いかなる理由からインテグレーション要求を行ったのかを究明することを目的とした。結果、次のことが明らかとなった。 ABAPSTASは、ミリガン、リード、及びロウをはじめとする視覚障害者によって高等教育機関に所属する視覚障害者の支援体制の確立を目的に創設された当事者組織であった。同組織創設の要因として三人が直面していた高等教育機関での支援体制の問題と、当事者運動が活発化していた当時の時代背景が挙げられた。またインテグレーション要求の背景には次の二点が挙げられた。一つは同団体の主張の根源には、当時の盲学校教育の質及び、三分岐中等教育制度への不満があり、その解決手段として晴眼児と共に学ぶ、刺激的で、卒後に大学進学も選択できる総合制中学校で学ぶことが可能なインテグレーションを要求したことである。もう一つは社会的偏見に遭遇した当事者によって結成されたABAPSTASにとって、幼少期から晴眼児と視覚障害児が共通の場で学ぶインテグレーションはその解消手段と映ったことである。今年度の研究成果については日本特殊教育学会第49回大会で発表したほか、障害科学研究に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りイギリスでの資料収集を実施し、必要な資料を入手できた。分析結果を特殊教育学会において発表し、障害科学研究(査読有)に投稿し採択が決まった。2回のイギリス訪問の中で次年度に向けたインタビュー調査のための準備も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度はABAPSTASの主張やその背景にある思想を多角的な視点から更に深く究明するため文献研究と並行してインタビュー調査を実施する。
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Research Products
(3 results)