2011 Fiscal Year Annual Research Report
小国における望ましいプルーデンス政策のあり方に関する研究
Project/Area Number |
23830075
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
布田 功治 東海大学, 政治経済学部, 講師 (70609370)
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Keywords | アイスランド / プルーデンス(金融安定化)政策 / 金融危機 |
Research Abstract |
研究計画において、初年度は基礎段階として、世界金融危機時にアイスランドが直面した国際的金融不安定性およびそれへの政策対応について、事実関係を中心に調査することを掲げた。その当初の研究計画通りに実施した研究の成果について、国内での研究活動成果および海外でのそれに区分して下記に示す。 国内での研究活動成果は、下記の4点に整理できる。第1に、過去10年分のアイスランド中央銀行年次報告書の読解および整理を行い、金融立国として発展から危機に至るまでの経済金融状況の推移を調査した。第2に、過去5年分のアイスランド中央銀行の金融安定報告書の読解および整理を行い、2000年以降のプルーデンス(金融安定化)政策の推移を調査した。第3に、アイスランド中央銀行の金融報告書およびウェブサイトの統計データを活用して、発展から危機に至るまでのマクロの経済金融データを整理した。以上の3点については、これまでのタイ金融危機研究で構築したのと同様の独自のフォーマットでデータベース化することで、タイとアイスランドの金融危機時におけるプルーデンス政策の比較研究を行うための基礎を固めた。第4に、世界的なプルーデンス政策研究および金融危機研究の動向について見識を広めるため、それらに関する書籍の読解および整理を行った。 海外での研究活動の成果は、当初の研究計画以上に有益な成果を得た。3週間弱の現地(アイスランドの首都レイキャビク)でのインタビュー調査および文献調査を通じて、金融監督当局と民間銀行との関係、預金保証といった個別具体的なプルーデンス政策の詳細や背景について特徴的な事実を把握した。とりわけ、貴重な資料として金融危機後の国会による「特別調査報告書」を入手した。当該資料は金融当局内部でどのような議論を経て金融監督を実施してきたのかを明らかにする資料でもあり、来年度の研究においても軸となる資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究を進めており、さらに計画では想定していなかった貴重な資料も入手した。ただし、その貴重な資料を入手したのが年度末であり、十分には分析していないため計画以上の進展とまでは言えず、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画通りに、来年度はアイスランドとタイのプルーデンス政策の比較を行い、小国のプルーデンス政策の望ましいあり方を分析する予定である。ただし、アイスランドで貴重な資料を得たことから、その資料をさらに活用するために、アイスランドの金融危機と深く関わり、かつ、いまなお国際問題となっているイギリスとの国際金融関係についての調査の必要性も実感している。それゆえ、イギリスとの間で国際問題となっている預金保証のあり方をめぐる論争についても、分析を深めることも検討したい。
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