2011 Fiscal Year Annual Research Report
家族主義福祉レジームの改革期におけるジェンダー政治の展開
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23830102
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
辻 由希 立命館大学, 政策科学部, 助教 (40610481)
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Keywords | ジェンダー / 福祉レジーム / 家族主義 / ケア / 日本政治 / 比較政治 |
Research Abstract |
1.1990年代以降の日本政治におけるジェンダーのアジェンダ化と家族に関する政策形成過程 1990年代以降の日本政治において、政治アクターによる政策課題の認識がどのように変容したのかを明らかにするため、国会会議録や白書、政党機関誌、その他政府・団体の文書などを通時的に概観した。この結果、まず第一に、1990年代半ば以降、介護、少子化、男女共同参画が重要な政策課題であるとの認識が政治アクター間で認識が高まったこと、またそれに伴い、国会で子ども、女性、男性について言及されることが増えたことが分かった。第二に、1990年代以降の家族関連の政策形成過程においては、以下の4つのアイディアがアクター間に混在していることが明らかになった。それは、家族への国家支援の増大とジェンダー平等の推進を目指すことにより多様な家族を支援しようとするアイディア、雇用労働と家事育児の平等分担を促すことによりケア労働の脱家族化と政府の福祉責任軽減の両方を達成しようとするアイディア、国家が家族に対して経済的支援を行うことにより、ケア労働の家族化(とくに女性による家庭育児)を推奨しようとするアイディア、そして国家の支援を受けない強い家族(しばしば性別役割が前提されている)を再生産しようとするアイディアの4つである。 以上の分析と、以前に執筆した論文に加筆修正を施した原稿を一つにまとめた成果を、2012年3月に単著として公刊した。 2.政治アクターと市民社会アクターの関係再編 まず、1980年代までの日本政治において、とりわけ女性運動と国家との関係がどのようなものであったのかを明らかにするため、労働運動の女性史や、女性運動の資料を収集した。この分析は現在進めている最中である。次に、1990年代以降のポスト55年体制期における政治アクターと市民社会アクターの関係再編を分析するため、現在、関係者からヒアリング調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代日本における家族主義福祉レジーム改革の政策過程については、研究成果を一つの単著として出版することができた。また、政治アクターと市民社会アクターの関係再編については、資料収集とヒアリング調査を進めている途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現代日本における政治アクターと市民社会アクターの関係再編については、引き続き、資料分析とヒアリング調査を継続する。 次年度の主要課題としては、日本を国際比較の中に位置付ける作業に取り組むため、海外の家族主義福祉レジームの変容とそれを促した政治過程に関する資料収集と分析を行う。
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