2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23830105
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大木 清弘 関西大学, 商学部, 助教 (20611073)
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Keywords | 海外子会社 / 能力構築 / 日本企業 / 製造業 / 拠点間関係 / 多国籍企業 |
Research Abstract |
本研究は強い海外子会社の構築のために必要な拠点間関係を明らかにするものである。当該年度の当初の計画では、理論的サーベイとマクロデータ分析が計画されていた。理論的サーベイでは今後の調査に必要な理論を整理すること、マクロデータ分析では、いくつかの仮説の検証を定量的に行うことが目的とされていた。成果としては、これらの研究結果を論文として発表することが目指されていた。 こうした当初の計画に合わせ、当該年度はまず理論的サーベイを行った。海外子会社のパフォーマンスについて議論した既存研究を多数整理し、海外子会社の「強さ」、「強さの構築」に関する理論的基礎を構築した。既存研究の整理を通じ、1)海外子会社のパフォーマンスを議論した既存研究における「強さ」の定義は多用であること、2)それらの多くは一時点での海外子会社の強さを問うもので、強い海外子会社の構築を直接議論していないこと、3)強い海外子会社の構築の要因としては「本国拠点要因」、「海外子会社要因」、「現地環境要因」に加え「拠点間関係要因」が挙げられることを明らかにした。この研究は、東京大学ものづくり経営研究センター(以下、MMRC)のディスカッションペーパー、赤門マネジメントレビューなどでの掲載を目指している。 こうした既存研究の議論に基づき、さらに当該年度は「本国拠点要因」に絞った議論を行った。ミネベア株式会社を対象にした事例研究では、本国拠点からの海外子会社への継続的な支援が、海外子会社を強くする要因となることが説明された。マクロデータ分析では、そうした本国から海外への継続的な支援に影響を与える要因を探求するために、海外への支援の代理変数となる海外派遣社員の増減に影響を与える要因を明らかにした。前者はMMRCのディスカッションペーパーとして掲載され、さらに赤門マネジメントレビューで研究論文として査読中、後者は関西大学商学論集に論文として掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった既存研究のレビューは終了し、マクロデータの入力・分析も行われているため、研究は順調に進展しているといえる。ただし、次年度に残した課題が2つある。1つ目はマクロデータの分析である。既存研究のレビューから導かれた仮説の検証をさらに行う必要がある。2つ目は企業調査である。タイに進出している日本企業への調査が、2011年のタイの洪水の影響で次年度に延期されてしまった。とはいえ、次年度の研究の下地は作ることができたので、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで理論的研究を中心におこなってきたため、今後は実証に重きを置く。具体的には、1)マクロデータのより多面的な分析、2)国内外の企業調査、及び3)質問表調査である。1)では本国拠点要因、海外子会社要因、現地環境要因と強い海外子会社の構築の関係をマクロデータから明らかにすることを目指す。2)では既存研究から得られた知見が現実に適用できるかの確認をし、3)で利用する項目について知見を得る。3)ではマクロデータの分析が難しい要因(例えば、拠点間要因)も加えた質問表を作成し、配布する。ここから、様々な要因と強い海外子会社の構築の関係を明らかにする予定である。
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Research Products
(2 results)