2011 Fiscal Year Annual Research Report
表情筋を介した情動および認知制御のメカニズム:生理心理学的アプローチによる検討
Project/Area Number |
23830107
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
福島 宏器 関西大学, 社会学部, 助教 (50611331)
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Keywords | 生理心理学 / 事象関連電位 / 感情制御 / 顔面フィードバック / 心身相関 / フィードバック電位 |
Research Abstract |
本研究の目的は,表情筋の操作(口角を上げるなど)によって,主観的な感情が左右される「顔面フィードバック」という現象の認知生理的メカニズムを明らかにすることである.中心的な方法として,実験参加者の感情や表情筋を操作しながら,意思決定に正負の報酬が伴う課題(ギャンブル課題)中の実験参加者の脳波(事象関連電位:ERP)と心電図を計測している.同時に課題遂行に関わる行動指標および心理指標も記録し,各指標間の相関関係も検討する.具体的には,下記の2点を検討している. (1)表情筋の操作が影響を与える処理水準(特に,認知機能への影響の検討) (2)意識的・認知的な感情制御戦略との差異 初年度は,(1)の実験系の確立をおこないながら,上記研究項目(2)の準備を先行して進めた.項目(2)の現段階での結果として,意識的に感情を強めたり弱めたりする教示に伴って,報酬処理のERPが変動する様子が明らかになった.具体的には,報酬の認識後200~300ミリ秒の比較的速い潜時で出現するフィードバック電位(FRN)の振幅は,感情の制御の影響をうけなかった.一方で,より遅い潜時で出現し,覚醒度の指標として知られるP300電位は,感情の制御にともなって有意に増減を見せていた.教示に伴う意識的な感情制御が成功していることは,課題中の主観的評定や,P300成分の増減などから示されている.一方で,FRN成分の振幅が意識的な感情制御の影響を全く受けないことは,意識的な感情制御の影響が,ある水準以上に及んでいないことを示唆する.2011年度末時点は,この実験を収束に向かわせる段階にある.FRN振幅が社会-感情的な文脈で有意に変動することを示した申請者らの先行研究から,表情筋の操作(研究項目(1))はFRN振幅に影響を与えると予想しており,上記の結果との比較を進めている.当年度は表情筋の操作手続きを予備実験によって確立し,2012年度の計測によって二種の感情制御機構を比較する準備を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの研究項目のうち,一つが順調に進み,またもう一方の準備も整っている.おおむね順調に進展していると評価できると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2つの研究項目のうち,前年度に進んだものを収束させ,結果をまとめる.同時に,もうひとつの研究項目をすすめる.年度末までには,この二つの研究項目の知見を比較することによって,身体と感情の関わりや,感情制御の戦略の違いから見た身体と認知の関係について,理論的な整備を行う.これらの成果は学会や学術論文にて報告する.
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Research Products
(3 results)