2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける住民主体型の河川管理に見る「人間と自然」調和の歴史
Project/Area Number |
23830109
|
Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
伊澤 正興 阪南大学, 経済学部, 講師 (40611942)
|
Keywords | 住民主体の河川管理 / 資源保全 / 環境保全 / 治水管理区 / 水資源委員会 / 水土保全区 / 水資源史 / 河川史 |
Research Abstract |
本年度の研究はイリノイ州スプリングフィールドの公文書館と州立図書館での史料調査を実施した。調査目的は,住民主体の河川管理について明らかにするため,郡レベルの治水管理区(Drainage and Levee Districts)の史料を発掘し収集することであった。当該公文書館には水資源管理の歴史的史料を多く所蔵している。なかでも,イリノイ州水資源委員会(Illinois State Water Resource Commission)の史料グループや郡レベルの治水管理区の史料グループは,書簡,内部資料,統計,アンケート,パンフレット,議事録,地図,中間報告書,年次報告書,新聞雑誌を含んでおり,河川と住民のかかわり合い,彼らの環境保全活動を把握するうえで極めて有益な史料である。これまでアメリカの水資源史や河川史は,水をめぐる対立構造を明らかにしてきたが,収集された史料は利害構造よりも,自然とコミュニティの調和や再生,これを模索してきた住民の歴史を知るうえで,必要不可欠な一次史料であった。 さらに今回の史料調査では,イリノイ川流域の水土保全区(Water and Soii Conservation Districts)の史料を新たに収集することができた。水土保全区の情報が加わったことで,河川流域のレクリエーション活動,環境教育セミナー,ハザードマップ,土壌保全および農業指導など,多岐にわたる河川管理主体の役割も明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は主に一次史料の収集であり,この点については,滞在時の時間的制約によって一部史料の収集が未完であるものの,主要な史料グループについては,おおむね計画を達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの計画達成度から推察すれば,今後の研究計画の推進方策は,引き続き現地の史料調査を継続するとともに,議会資料の収集も併せて実施することで,法制度の立法過程や政治過程との照合作業に取りかかりたい。この作業は,住民主体の河川管理と連邦治水法制度の関係を分析することで,前者の活動を国家的な水資源保全運動に位置づけるとともに,事例の一般化を図りたい。こうした作業を通じて,最終的には本研究成果を著書出版の形で社会に貢献する予定である。
|
Research Products
(2 results)